36歳の婚活-1
絶望を理解したわたしはさっさと射精させて見苦しい獣のような勃起を鎮める事でわたしの身体を守ることを優先させようと必死に言葉を選んで切り返していた。
「わたしは何をしたら良いのかしら」
「良いのよ。お好きなようにしてくださって」
虚を付かれたように直人の動きは止まった。
「驚いた」
「初めてだよ。そんな返しがきたのは」
爪先立ちに仰け反っていた踵をゆっくりと床に降ろしまるまると輝く瞳で本当に驚いてるようだった。
「そうか」
「そうなることも、あるのか」
相変わらず勃起した反り返しを空間に彷徨せながら大きく見開いた瞳は異常な輝きを増していた。
それでいいのよ。さぁ速くいきなさい。わたしの歳をなめるんじゃないわよ。若者の思惑に嵌められた強い怒りの矛先が諦めと引き替えに反撃の糸口を手繰り寄せていた。
「何をしてほしいのかしら」
「好きなように仰って下さるかしら」
床に打ち付けた痛む腰を悟られないようにそっとお尻を軽く浮かして艶かしい太腿のラインを真上から見下ろせる様に太い腿を交わせ、ふんわりと柔らかい脹脛の隆起を見せ付けながら両手を立てて胸元の谷間を目一杯寄せ集め見下ろす直人を挑発するように上品な言葉を選んでゆっくりと問いかけていた。
「すごいや」
「たいしたもんだよ」
嫌な奴。激しい怒りに狂いそうになったが勃起した異常な姿で凄まじい行動力を見せ付けられたわたしは、静かに怒りを鎮め速く終わらせる機会を探しながら腰を浮かして太腿の隙間から覗かせる盛り上がった下着を見せ付けるように大胆な姿勢に切り替えていた。
「結婚に一度失敗した絶妙な36歳の甘い女」
「一回りも歳の離れた親子のような素顔を世間に晒しても、全く恥らう素振りを隠さない厚かましい女」
「早く脱いでやりたい盛りの若者を毎日愉しみにする欲求不満で一度失敗した36歳のいやらしい女」
「36歳になって明らかに熟した身体を隠すようにあからさまなアナウンサースタイルで誤魔化す厭やらしい女」
「僕は、あなたのことをそう理解していました」
直人は大きな瞳を一段と輝かせ、相変わらず反り返った勃起を彷徨わせながら感心するように言い放っていた。
「馬鹿にしないでよ」
逆手に挑発を浴びせてくる直人に咄嗟に喉元まで迫ったその一言を何とかこの場をやり過ごすために強く奥歯を噛みながら飲み込むことで精一杯だった。
「図星ですよ」
「僕には全てが分かるんですよ」
直人は満面の笑顔でリビングの奥に置かれた鋲打の本革素材に随所に細やかな刺繍が施されたアンティークな一脚のソファーを引き摺って都内を羨望できる窓際に置きながら反り返った勃起を彷徨わせ、わたしに向かって「それでは、ここにどうぞ」と冷たく据え置かれた瞳でわたしに冷淡に言い切っていた。