帰宅-1
会計は佳奈が全て支払い終えていた。
ホテルを出た佳奈はタクシーに乗る間際に「後で連絡するわ」とわたしにだけ聴こえるように耳元で囁いて気配を消すように帰った所だった。
「あぁ、楽しかった」
朋未は酔って紅色に染まった笑顔で佳奈を見届けてから「今日は旦那が迎えに来てくれてるからまたねぇ」と告げてパンプスを響かせながら駐車場に向かって相変わらずお尻を振りながら帰っていった。
わたしは一旦ロビーに戻り、酔った身体を醒ますために珈琲を頼んでホテルの客層を眺めながら今日の出来事を思いだして苦笑いを噛み締めていた。
「いやだ。見えてますよ」
朋未はわたしのスカートの隙間を意地悪な瞳で見ながらだらしなく濡れてしまったランジェリーを慌てて隠すように閉じて「見ないでくれるかしら」と強がるのが精一杯だった。
事実わたしの新品の高級ランジェリーは太腿に溢れ落ちるほど濡れていた。
朋未が魅せつけたあの後ろ姿が羨ましくわたしがあの姿で攻められたのは何時以来かしらと珈琲の香りを確かめながら遠くを見つめていた。
朋未が魅せつけたふくらはぎの隆起と靴底が放つ色気を思いだし珈琲を飲んで醒ました身体がまた熱く火照っていくのを自覚していた。朋未が太腿を伸ばして競り上がった若く艶のあるふくらはぎの筋肉の塊を思いだし乾きつつあったわたしの下着がじっとりと湿り気を帯びてくるのを感じていた。
濡れたランジェリーが恥ずかしくて火照った身体を覚ます為にもホテルを後にすることにしていた。
わたしが暮らす大田区は旦那の実家近くに建てられた小さくもなく大きくもないごく普通の建屋だった。
大田区まで三田線を経由して歩いて帰ることにした。車内に映るわたしの姿は結婚式の帰りの様な洋服で、31歳のわたしの姿は贔屓目に観ても20代の輝きを見つけることはできなかった。
それでも高価な装飾品は、わたしを裏切ることは無く励ますようにわたしを見つめて周りの視線から守ってくれているようだった。
「ただいま帰りました」
「いまから用意しますわね」
旦那に向かって廊下から声をかけてみたが旦那はまだ帰宅してなく、誰もいない自動照明の下で久しぶりに履いたパンプスを不器用に外してほっと溜息を零していた。
リビングのライトを点けて着替えようかしらと部屋に向かおうとしたところ旦那が少し酔った様子で「ただいま」と玄関でわたしに微笑みを向けてくれていた。
「あらやだ、今着いたところよ」
「同じ電車だったかしら」
旦那の前で高級ドレスを見せているようで恥ずかしく視線をズラしながら部屋に向かおうとした所だった。
「久しぶりのドレス姿とても綺麗に似合ってるよ」
旦那は照れるようにはっきりとわたしに見惚れてるようだった。
「いやだわ、何だか恥ずかしいわ」
「着替えてきますね」
本当に恥ずかしくなり部屋に逃げるように入ろうとしたその時だった。
「許してくれないか」
旦那はそう呟いて部屋に入ろうとしたわたしの後ろからキャミソールに膨らむハイトップの胸を両手でしっかりと掴んでお尻に充てた旦那のものはガッチリと硬くその温度をわたしに伝えていた。
「いやよ、ここは廊下ですわ」
突然の出来事で全く準備できていないわたしはそう返すしかなかった。
旦那はその時に饒舌にならない人だった。淡々と、粛々と、黙ってわたしにしてもらいたい事を促すのがわたしの旦那だった。
「やっぱり、着替えたいわ」
旦那は何も言わずキャミソールの谷間から溢れそうなハイトップの胸を曝け出させようとその手元は大胆に胸元を貪りお尻に押し付けた股間はドレススカートをなぞるように腰を震わせ首筋にねっとりと舌先を舐めましわたしの自制を崩しに襲いかかり、わたしの身体は久しぶりの高揚に明らかに向かえ入れる準備に入った状態だった。