ツンデレ娘-2
有美にしても、少なからず涼平に対して好意を持っていることには気付いていた。
場合によっては、一晩共に過ごしてもイイとまで思ってもいた。
ただ、このようなやり取り(プロセス)が好きなのだ。有美本人は、『言葉のイチャイチャ』だと思っている。
そのことを涼平は早い段階で察知していた。だから、ある程度は泳がせておこう。そう思っての行動だった。
魚釣りで言えば、針が口に引っ掛かった状態。だが、まだ奥深くには飲み込んでいない。気まぐれな魚は、ジタバタと針を振りほどくかもしれない。涼平は、完全に飲み込むタイミングを見計らっている。
有美が焦れなければ、半ば強引にことを進めることになるかもしれない。出来る限りすんなりと合意を取り付けたいものだ。
「本当にこれでお終いなの?つまんないの」
焦れているのは有美の方だ。
多分これまでに声を掛けてきた男は、強引に手を引っ張っていったか、面倒くさくて自主撤退したかの二通りしかいないのではないか。
我慢強く駆け引きしている涼平でさえ、そろそろ潮時かもと思い始めたところだった。
「うーん・・・・・・その気が無い女をいくら口説いても、時間が無駄になるだけだから。だったらシャワー浴びて、とっとと寝た方がよっぽど有益だしね。俺、そこまで手をかけるつもり無いし」
涼平は、かなり冷徹に言った。
有美の顔が、一瞬にして曇った。
「だから、これで何の反応も無かったら、本当に帰って寝るよ」
そう言って、有美の唇を奪った。
軽く合わせただけで、すぐに唇を離す。が、有美は追いかけるように抱き着き、今度は有美の方から唇に吸い付いてきた。
(完全に針を飲み込んだな)
有美は、激しく涼平の唇を吸った。
十分に焦らされ、完全に涼平のペースにハマったと気付いていたが、それでも涼平から離れたくないと思うようになっていた。
そして、有美自ら涼平の口の中に舌を滑り込ませた。
「やっぱりどうしようかなぁ」
部屋に誘うことに成功した涼平だったが、ドアの前まで来ても、有美はどっちつかずの反応を繰り返していた。
店にいる時から、もうかれこれ1時間は、この押し問答的なやり取りを繰り返している。慣れてはきているが、さすがに面倒くさい。
「エッチなこと考えてるんでしょ」
この場に来てまで何を言っているのかと思いつつも、有美自身が、このやり取り自体も性交渉の一部なんだと、言ってみれば前技的なシチュエーションなのだ。
「大丈夫だよ。一緒に居るだけなんだから」
涼平も口裏を合わせる。
「本当かなぁ」
そう言いながらも、涼平が部屋のドアを開けると、有美自ら進んで部屋に踏み入れた。
「ああぁ気持ちイイ」
涼平のベッドに、背中から倒れ込み、大の字で寝っ転がる有美。
太目ながら長く伸びた脚がキレイだ。そのスカートの奥がチラリと見えそうな位置で、絶妙に開脚を踏みとどまっている。
これには、どんな男でも、そこに目が釘付けになってしまうはずだ。
意識してなのか、無意識なのかは判断しかねるが、男を生殺しにする天性のテクニックを装備しているのかもしれない。
普通であれば、この状況がスイッチとなり、このまま押し倒してSEXにまで持ち込む流れだが、有美の場合、また面倒くさいやり取りが発生することは、火を見るより明らかである。
ここは我慢をし、すんなりとコトに及びたい。このしちめんどくさいキャッチボールを諦めさせ、どう有美を完全発情させるかが、涼平の腕の見せ所だ。
「少し飲む?冷たくて美味しいよ」
涼平はコンビニで買ってきたミネラルウォーターを差し出した。
「ありがと。ちょうだい」
ベッドに腰掛けたまま、腕だけ伸ばす有美。
「何!?持って来いって」
涼平は、ミネラルウォーターを有美に手渡し、同時に有美の横に腰掛けた。
「ああー、私のカラダ狙ってるぅ」
ほら始まった。想定していた通りだった。
「だぁかぁらぁ、こんな状況で発情しない男はいないって」
そうは言ったものの、半ば呆れたように立上り、ベッドから離れようとした。
「ああぁん、ごめーん」
そう言って有美は、立ち上がった涼平のベルトに手を掛け、再びベッドに座らせた。
これが発情の合図だと察した涼平は、すかさず有美に覆い被さり、キスをした。
有美も涼平に絡みつき、優しく唇を舐めた。
涼平は、スッと手を有美の脚の間に滑り込ませる。
「はぁん」
悩ましい声が有美の口から漏れた。
ゆっくりと撫でようとすると、
「ダーメ。エッチなことはしないって言ったでしょう。キスだけよ」
やっぱり始まった。結局は振り出しか。
それでも一歩一歩着実に進んでいることは間違いない。折角我慢してここまで来たのだから、ここで焦っても仕方がない。
自分でキスまではと、線引きしたからだろうか、キスは有美の方から積極的にしてくる。
だが、そこは涼平も男。いつまでもキスだけで満足しているはずがない。
有美が舌を捻じ込んできたタイミングで、ゆっくりと胸を揉み上げた。
「はんっ」
一瞬、有美も感じた素振り見せたが、すぐに
「だから、ダメだってばぁ」
と、突き放そうとする有美だが、心なしか押し返す力が、弱いように感じた。
有美もそろそろ観念したのだろうか。
涼平は、一気に最後まで持ち込もうと、有美のカラダに覆い被さった。
その瞬間、
「ごめぇん。シャワーを浴びさせて」
と、受け入れる意思表示を見せてはくれたものの、シャワーを浴びてからとの条件付きだった。
一日中蒸れたパンティの中身を想像するだけで勃起してしまう、匂いフェチの涼平としては、是非とも嗅いでみたかったのだが。
しかも、有美のような大柄でスポーツマンタイプの女性は今まで関係を持ったことは無かったので、どんな匂いなのか興味があっただけに、至極残念。