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【スポーツ 官能小説】

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便利屋-1

「あ、こんにちわ。ご無沙汰しています」
 桂木涼平が納品を終え、営業所に戻ると、支社長が来ていた。
 山内支社長は、涼平が入社した当時の営業所長で、営業のイロハを叩き込んでくれた上司だ。
「おおぅ、元気でやってるか?」
 所長が重要得意先との商談に同行するのだそうだ。
「そこは俺が開拓した客先でな、今でも仲良くしてる当時の担当が、今度重役に昇進したんで、挨拶に行くとにしたんだ」
 山内が出世した一つの要因が、そのメーカーと早々に代理店契約を結んだことにあった。
 今でも、弛まぬ友好的なパートナーシップは、歴々の担当が築き上げてくれた賜物。何があっても、この良好な関係を継続させていかなければならない。涼平はあらためて身が引き締まる思いがした。
(そういう歴史があってのいまなんだよなあ。俺の行動一つで会社の行く末も変わってしまうかもしれない。それ考えると、坂村女史との一晩は、ちょっと浅はかだったかもしれないな)
 あの日以降、何度か坂村女史とは顔を合わせたが、普段と変わらぬピッとした仕事姿で、あんなことがあったとは、微塵も感じさせない。
 それだけ、彼女の方が大人だということか。
「あ、そうだ涼平。この間、来月の展示会に手を貸してくれって言ってたんだけど、あれキャンセルになったから」
 所長の酒井が、スーツに手をかけながら言った。
 元カノで、現在もセフレとして継続中の女に会える良い機会だと思っていたから、残念だ。
「当初よりも規模を小さくすることになってな、今後は違った形の展示会を検討していこうと、支社長と話していたんだよ」
 その展示会自体、マンネリ化が続いていることは、涼平の会社の者ならほとんど気付いている。先代社長の義理もあって、毎年出展している展示会なだけにむげに撤退することは簡単なことではないが、会社としても変革期が来ていると感じ取っていることは間違いなさそうだった。
 「代わりと言っちゃあ何だが、さっき支社長から別の案件もいただいたから、そっちをお前に任せようと思ってる。細かいことは帰ってきてから話すから」
「若いうちは、色々と経験しておくといいぞ。俺も、何でこんなことしなくちゃならないんだって思う仕事を、山のようにこなしてきたんだぞ」
 山内の言うことは、誇張されてはいない。サバサバとした性格で、割と淡泊な印象に見えるが、実の所はコツコツと地道に積み上げていく仕事振り。社内外からの信用も厚い。 その山内が、自分の経歴を自慢話のごとく盛るようなことはしない。加えて、言葉尻から読み解くと、どうやら我が社の業務内容の本筋からは、少しばかり逸れた仕事であるとも窺い知れる。
 涼平の勤める会社は、医療介護系の商社である。
 その中でも、小売販売を主な業務とする販売促進部に籍を置いている。大学病院から一般の開業医まで手広く担当しており、医療機関に出向くことがほとんどだが、時折舞い込んでくる、一般小売りなども請け負っている。
 中には、メーカーのキャンペーンにお供し、路上販売の口上よろしく、通販番組のデモンストレーターのような仕事もこなさなければならない。そういった仕事は、何故か涼平に回ってくることが多い。
「お前は多才だからな。上手く立ち回れそうもない奴には振れんのよ」
 大手ばかりを担当している同僚もいる中、文字通り色物的な仕事も捌いている涼平だが、特に不満がある訳ではない。元々出世欲も強い方ではないし、楽しく仕事が出来ればそれで良しと思うタイプなので、例えそれが色物的な物であっても、涼平自身は気にすることもなく日々業務に勤しんでいる。
 もちろん、本来のメイン事業である医療機関との取引もソツなくこなし、業績面でも堂々とした成績を残している。
 涼平本人は、変化のある色物的仕事も、変化の少ないルーティン仕事も力の入れ方は変わらない。寧ろ色物的仕事の方が、楽しくやれている気がするぐらいだ。
 午後の納品が終わり、夕方会社に戻ると、外出していた酒井も戻っていた。
「おう、お帰り。支社長がよろしくなってさ」
 こういう細かな部下への心遣いも、山内の才覚の一つだろう。
「で、早速なんだが、出掛けにちらっと話したけど、別の案件をお前にお願いしようと思ってな」
 恒例の先代社長の義理のみで協力していると言っていい展示会に変わる案件だから、どこまで期待をして良いものか。
「今回の案件は、、相手があのZ薬局チェーンだから、そんなに色物的な仕事じゃないぞ・・・・・・と言いたいところなんだが、ちょっとエキストラが入るんだ。これが」  Z薬局は、この地域一帯に数十店舗を展開する、地元では押しも押されぬ有名企業の一つ。全国規模の某有名チェーンに比べれば、メディア露出は低いが、地域での知名度はその上をいく。涼平の会社にとっても、Aランクの得意先である。
「Zさんだったら、上得意先じゃないですか。それにあそこの本社って、うちの支社管轄じゃないですよね」
 Z薬局の本社は、涼平の属する支社が担当するエリア外。別の支社が担当している。
 確かに、涼平の営業所が担当するエリアにも、数店舗あるが、企画なんかは本社で検討されることがほとんどのはずである。
「そうなんだよ。音無さん(隣の支社の支社長)のとこなんだけど、今回の企画っていうのが、複数の広域店舗を対象にしてるとかで、うちの担当エリアのいくつかでもイベントが実施されるらしいんだわ」
 イベント?展示会とかそういう類ではないことがわかった。イベントならば、実演販売のサポート辺りか。涼平は、酒井の端折った説明から推測した。
「フットマッサージャーのコンポーネントシステムあるだろ?お前は、アレを扱ったことあったっけ?」
 有名家電メーカーが発売している、コンパクトなフットケア器具は、家電量販店などでも気軽に購入できることから、結構な売れ筋になっている商品群だ。


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