おばさんの秘密の想い出-1
時って、残酷なものやね。
1972年なんて、何年前の話になるのん?
そんな年に、アタシはもう小学五年生やったんやから、たいしたモンやわ。
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その年の四月に、アタシとパパとママは新しい団地に引越ししたんよ。
すっごいキレイな建物がいっぱいで、アポロ宇宙船の発射台みたいな高い給水塔が、遠くからでも良く見えた。
アタシ、出来て間なしの小学校で五年生になった。
学校もピカピカやったけど、机やイスやらは間に合わなくて、どっか(どこか)の学校の使い古しの 上がパカッと開く木の机を使ったりしとった。
そんで、毎日どっかから転入生が来た。
アタシら、四月からおったから いっぱしの「先輩」みたいな顔をして、転入生に学校の案内なんかしとったわ。
団地も学校もちゃんとしとったけど、団地のまわりは別世界みたいに何にもない、ただ一面原っぱやったわ。
プレハブで作ったスーパーと、郵便局があったくらいで。
そやけど、団地の中に広い公園があって 子どもらがいつ見ても遊具に群がっとったわぁ。
給水塔の足元にあったから、「アポロ公園」って呼んどった。
アタシの家もそうやったけど、みんなパパもママも働きに出る「鍵っ子」やったからなぁ。
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夏休みになって、ラジオ体操が始まったら アタシら「四月から住んどる高学年」は ひと足さきに公園に来てラジオとか受付とかの用意して、みんなの前に立って体操の手本見せたりしたんやわ。
公園に子どもらがいっぱいやったわ。みんなが一斉に手を振りあげたり跳んだりするのが、マスゲームみたいで前で見とって気持ち良かったわぁ。
午前中に夏休みの宿題なんかして、お昼過ぎてから公園に行ったら、みんな公園に集まっとるねん。
今にしたら何が楽しかったんやろと思うくらい、ブランコこいだり、シーソーをギッコンバッタンしたり、らせん状のすべり台何回もすべったりしとった。
そやけど一番人気があったんは、「宇宙ステーション」なんて呼んどった土星の形した、くるくる回るジャングルジムやった。
ちっちゃい子らが乗っとる時に、「お姉ちゃん」でもあるアタシがチカラいっぱいくるくる回したるねん。
ちっちゃい子らがキャーキャー悲鳴あげるんが楽しかったわぁ。
そんな夏休みに、エラい体験してもたんや。