巴のバレンタインデー-1
「はいチョコレート。」
「うわぁーありがとう若葉ちゃん。」
前日、母と二人でスーパーへ行き材料を買い一緒に家でチョコを作った、お察しの通り手作りだ。母は祖父にそして私は愛おしい彼に。
「いつ食べようか?家に帰って母さんと八重樫さんに見せてから、いやいやでも中身がどんなのか知りたいし今から、うーん悩むなえへへ♪」
二ヘラーと口を開け頭に手を添え楽しそうな彼、その表情はまさに溶け出したチョコそのものだ。
とは言え私も彼の為にキッチンに立ちチョコを作っていた時もそんな表情だったのだろう、彼の嬉しそうな顔を頭に浮かべつつ溶けて液体と化したチョコをかき混ぜたり型に入れる時も、とても楽しかった。
「若葉ちゃん、ホワイトデーは必ずってあれは?」
「うん?」
下校中の私たちの目に飛び込んできたもの、それは。
「巴、ちゃん?」
「…。」
巴ちゃんがガラにもなく両手を後ろに手にはチョコを握りもじもじとしている。
一条君にあげるのかな?そう思いニコニコと彼女の目の前で立っている人物に目をやると
「えっ?」
そこには恋人の一条君ではなく。
「あれって確か隣クラスの水野君じゃない?」
彼はバスケ部のエースらしく背も高くスポーツ万能、嘗てバスケ部に所属していた佐伯君の後継者とも言われている、まぁ本人はそれを嫌がり「俺は俺だ、後継者何かじゃない」と否定するも女子から圧倒的な支持を得ている。
そんな彼に巴ちゃんがチョコを?恋人の一条君を差し置いて。
「…何か、義理チョコって感じでもなさそうだよ。」
「巴、ちゃん…。」
まさか、浮気?