ド-8
そっと伸ばしてきた主任の手は
私の腰にやさしくからまる。
起きないように、ゆっくりと私を引き寄せて
私は主任の腕の中に包まれた。
腰にあった手が髪をなで、耳たぶを愛撫する。
そして腰に戻ってさらに私を引き寄せた。
そして―――
そっと・・・そっと
私のひたいにキスを落とす。
「おやすみ。しおり」
そう呟いて、ほどなくして小さく寝息を立て始める。
私を抱きしめて、安心したように主任は眠る。
私の知らない声で
私の知らない私を愛している主任。
優しく。
これ以上なく優しく抱きしめられている私の知らない私に
誰でもない私が嫉妬する。
そっと主任の背中に両手を回して
抱き合えば、それは紛れもない私の身体なのに。
主任と抱き合っているのは私じゃない私のような気がして怖い。
主任が愛している私は、どんなオンナなのか。
知りたくても、知ることが出来ない思いを
鏡に写った自分にぶつける。
愛してほしい。
今、この私を―――