ド-2
今日も夕飯を作って待っていてもなかなか帰ってこない。
テレビを見ても知らない人が多くて面白くない。
全く知らない国に来たみたい。
つまらなさにぐるりと部屋を見回せば
リビングにはたくさんの、主任と私の写真が飾ってあった。
1つ1つ手に取ると、まったく埃をかぶっていないのよね。
よっぽど丁寧に掃除してるんだな。
そう思いながら写真をじっと見つめる。
どの写真も恥ずかしいぐらい、主任は私を甘く見つめて
優しく笑っている。
こんな顔、するんだ。
何もかも、私の知っている主任とは別人でびっくりだよ。
昨日・・・
キスされた時もびっくりした。
主任ってば、あんなふうにキスするんだ。
そっと自分の唇を人差し指でさわれば
昨日のキスが思い起こされた。
あんなにドキドキするキスをしたことがない。
もう1度。と思わせるようなキスをしたことがない。
5年間、私はどれだけ愛されていたんだろう。
5年間の自分に嫉妬した。
どれだけ愛されて
どれだけ大事にされて
どれだけ楽しい時間だったのか。
思い出せないというよりも、
その時間を過ごした、知らない自分に嫉妬する。