〈特別な日〉-2
「あれ？……一つ無い……」
花恋は、学校に着ていく白い下着が無いのに気付いた。
自分専用の洗濯ネットを用意してた花恋は、必ずネットに脱いだ衣服や下着を入れておき、ある程度溜まってから自分の分だけを洗っていたのだから、無くなるはずはないのだが……。
(洗濯機の中に落ちてる……とか？)
花恋は部屋から出て階段を下りる……そして廊下の中程で次男の裕樹と会った。
「あ、裕樹さん」
『………ん』
いつも裕樹はそっけない。俯きがちに頭を下げ、殆んど目も合わせてくれない。
それは今に始まった事ではなく、田川家と元木家の顔合わせの時からだ。
(恥ずかしいのかしら？ま、別にいいけどね……)
特別に気にもとめずに洗濯機に向かい、そして蓋を開けて中を見る。
やはり、白いブラジャーとパンティは残ってはいなかった。
(まさか…ッ!?)
一瞬、花恋は裕樹を疑った。
ついさっき、洗濯機の中に残っていた下着を見つけて、そのまま持ち去ったのでは……と。
(ち、違うよね。だって手ぶらだったし……)
思い返してみれば、裕樹はＴシャツにジーンズだったし、何処かに隠し持ったりしたら直ぐにバレるはずだからだ。
花恋は疑った自分を軽く諌めながら、二階の自分の部屋へと戻った……。
(どっかにやったっけ？でも、確かにネットに入れて……)
花恋は不思議がりながらもお気に入りの音楽をかけ、椅子に座って天井を眺めた。
この二階の構造は、階段を上がって左側に花恋の部屋があり、対面するようにして左側から裕樹・裕太の部屋が並ぶ。
それにしても静かである。二人とも居るのか居ないのか分からないくらいで、何らかの音を発てるのは花恋だけといったところだ。
｛プウッ………｝
花恋は腹部の膨満感に従って放屁をしてしまった……。