M好機-1
恵子はここ10日ほど毎日考え続けていた。
あの日媚薬を飲まされて強烈な絶頂を与えられたと思っていたが違った。
実は雨宮という男とのセックスの相性の良さだと気づいた。
あれほど嫌だった男を今は愛おしく思い再び抱かれる事を願っている。
あの夜の快感は夫からは絶対に得られないものだ。
考えに考えたが結果は得られなかった。
安定した生活か女としての喜びか、決めかねていた。
もう一度抱かれたら間違いなくあの男の虜になってしまうのは明らかだ。
あの時下りてきた子宮を亀頭でえぐられ鈍い快感を与えられた。
いつもの鋭いアクメとは明らかに違う重い快感が混じっていた。
その快感がじわじわと増大していくのを膣の奥に感じながらのフィニッシュだった。
そんな時あの男からLINEが入った。
「会いたくて毎日身もだえています。僕を助けて下さい。直ぐにでも会いたい。」
彼女は今夜絶対に来るという自信満々のLINE送付だった。
夜、インターフォンから流れる彼女の声を聞き、ときめきながら玄関へ走った。
ドアーを開け抱きしめようとした時、人の気配を感じ思いとどまった。
恵子さんの後ろには夫の田中さんが立っていた。
「昼間、二人で警察に出頭しました。ある意味自首したと言ってもいいでしょう。
私が不甲斐ないばかりに起こしてしまった犯罪なので二人でお詫びに来ました。」
「そうなんです。雨宮さん許して下さい。ものすごく反省しています。」
「僕も友人の田中さんや恵子さんを訴えるつもりはありません。
警察にも行く前に来てくださればよかったのに。」
「いえ、罪はきっちり償わなければ尾を引きます。
一生あなたに負い目を感じなければならなくなります。」
田中さんは僕が彼女を脅迫して金品や肉体を要求される事を極度に恐れている。
「すべて水に流しましょう。証拠の録画も消去しておきます。」
「ありがとう。明日にでも弁護士が来ると思いますが示談の方もよろしくお願いします。」
「わかりました。それに僕は絶対に他言はしませんので今まで通り遊びに来て下さいね。」
その後もいろいろ探りを入れてみたが俺に抱かれたことまでは話していないようだ。
翌日から晴れ晴れとした表情で恵美ちゃんと遊ぶ恵子さんの姿が見られた。
誘っても絶対にダメよというオーラに囲まれながらも何となく媚びているように思える。
自分を抱き得も言えぬ快感を与えてくれた男に対して特別な感情を持っているのは明らかだ。
しかし本人はその心に鎧をかぶりそんな気配は完全に消し去ったつもりだ。
メイク、ファッション、会話、身のこなしなど明らかに以前とは違う。
以前は嫌いな男だが娘を安全な公園で遊ばすために仕方なく付き合っていた様子だし
仲間のママ達もみんなそれは知っていた。
恵子は僕の口説きをすべてママ友たちに話していたからだ。
「もういい加減に諦めてくれたらいいんだけどまた口説かれたわ。もういやっ。
前回あれだけピシャリと突き放したのにわかっていない様だわ。」などと話しているようだ。
昨夜もその様子を寝物語で真由美から聞いた。至極の快感から解放された後言った。
「こんなに凄い雨宮さんだって事知らないから無理もないわね。本当にボロクソよ。
もうあの人を口説くのは止めた方がいいわよ。あの人ご主人一筋の貞節な奥様よ。」
だが、今は違う。と、僕は思う。
以前僕に抱いていた生理的嫌悪は取れ媚びを含んだ拒絶に思える。
彼女本人もそれに気づかないほどの僅かな心の変化だ。