投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

タダシイコタエ
【大人 恋愛小説】

タダシイコタエの最初へ タダシイコタエ 13 タダシイコタエ 15 タダシイコタエの最後へ

1-14

「美樹、泣いてたか……?」


幸太の悲しげな瞳がこちらに向く。


望美は、さっきまでここにいた美樹の涙を思い出してーーそして、黙って首を横に振った。


「……すごく冷たい目で、『あんな男、もうどうでもいい』って……」


「そう、か……」


幸太は、ハーッと大きなため息を吐いた。


全てが終わった、そんなため息だった。


刹那、望美は項垂れた幸太の身体を抱きしめた。


耳元で、幸太がハッと息を呑む。


「幸太、アタシは幸太が大好きだよ」


「の、望美!?」


「幸太にとって、アタシは単なる浮気相手でしかないのはもちろんわかってる。でも、アタシはずっと幸太が好きだったの。幸太が彼女さんをどれだけ大切にしてるのかも知ってて、ずっと苦しかったけど……それでも側にいたかった。もちろん、今だって、これからだって……!」


顔を上げた幸太の目に映ったのは、望美の精一杯強がったような笑顔だった。


気の強そうなつり上がった瞳。でも、それがかすかに涙で潤んでいることに気づいた幸太は、ついに望美の身体をしっかりと抱き締めていた。


「望美、こんな俺でもまだ好きでいてくれるのか?」


「馬鹿ね。キライだったらとっくに離れてるわ」


望美の声がいつになく鼻声になっている。


自分の腕の中で、彼女の細い身体が小さく震えている。


幸太はそこで初めて、浮気相手としてしか見ていなかった望美に対して罪悪感と、愛おしさを感じ始めていた。


もしかしたら自分の罪は、美樹に内緒で浮気をしていたことではなく、望美を二番手としていいように扱っていたことなのではないか。


本当に大事にするべきものを、間違えていたのではないか。


幸太が抱き締めていた腕に力を込めると、


「幸太……苦しいよ」


と、嬉しそうに文句を言う望美。


幸太はますます胸を締め付けられるような気がして、大きく鼻をすすった。




タダシイコタエの最初へ タダシイコタエ 13 タダシイコタエ 15 タダシイコタエの最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前