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タダシイコタエ
【大人 恋愛小説】

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1-13

鳩が豆鉄砲を食らったような顔に、思わず苦笑いになる。


“あの後”ちゃんとメイクして着替えたんだけどな、なんて思いながら、望美はユニットバスの扉を閉めた。


「お、お前……帰ったんじゃなかったのかよ!!」


幸太は望美へ駆け寄ると、その肩を掴んで問い詰めるように声を荒げた。


「え、だって、約束したじゃん。幸太が仕事を終えたらずっと一緒にいようって。彼女、明日の夜まで帰って来ないから、いっぱいエッチしようってさ」


「…………」


幸太は口をパクパクさせながら、視線をテーブルの上のシェリーメイと望美を左見右見している。


それだけで幸太が何を言おうとしているのかが、望美にはピンときた。


「あ、ごめんね……。彼女さんと鉢合わせしちゃった」


申し訳無さそうな顔をすると、彼の視線が一瞬鋭くなった。


あんただって悪いんじゃない、と思わず反論したくなった望美だったが、それをグッと飲み込んで悟られないように俯いた。


「彼女さん、薄々気づいていたみたい。だから、幸太に嘘を吐いて泳がせたんだって。……ゴメンね、アタシも今日だけはずっと幸太と一緒に居られるのが嬉しくって、つい油断しちゃって……」


声を震わせる。健気な女だと思わせるために。


しかし、幸太は、


「美樹……なんて言ってた?」


と、望美の顔を無神経に覗き込んだ。


途端に心の中で舌打ちが漏れる。


ーーこんな時でも美樹、美樹って。


男にしてはツヤツヤしたその頬を打ってやりたい気になったが、それを押し隠して、悲しそうに幸太から目を逸らした。


「……一気に冷めたって。もう顔も見たくないって。アタシ……誤解だって何度も説明しようとしたんだけど……」


そう言うと、幸太は再び床にヘナヘナと座り込んだ。




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