僕だけにしか わからない夜空-1
高校を出て、地元の産物を紹介する仕事についたら、各地に出かけてばかりで、地元にあまりいられなくなった。
春の近いある日。
数週間ぶりで山と田畑が広がる内陸の田園にある、自宅で過ごしてる僕は、夜になってから庭にあるドームへ、小さな投影機を持っていった。
庭のドーム……それは僕が小学生時代、父に作ってもらったものだ。
僕はプラネタリウムが好きで、よく庭にテント式のドームを張っては、おもちゃのプラネタリウムを投影していた。
地元じゃ普通に天の川だって見られる。
ただ、自宅のある所は山が両側に迫っていて、星を見るにはちょっと不便だから、プラネタリウムで見えない部分の星空の「あたり」をつけていたんだ。
だけど父が、テントの中でちぢこまって星を見てる僕を見て、
「そんなセコい真似をして見るなよ。」
と、庭の空いた部分にドームを作ってくれた。
直径8メートルある、けっこう規模の大きなヤツだ。
やっぱり、大きなドームで見ると投影される星空の迫力が違う。
それから、学校の天文部が作ったプラネタリウムや、360度の全周を取り巻く動画が投影できる装置など、いろんな「上映会」にも使われるようになった。
でも、僕があちこちに出かける事が多くなって、今は じわりじわり倉庫扱いにされてしまってる。