第13話『開糞!なんでも鑑定団』-3
『えー、しっかり運動で鍛えているだけあって、中々消化は良いですねぇ。 燕麦、ウマゴヤシともに、きっちり決められた量を含んでいます。 形が細くて長すぎるのは、ですから食事を手を抜いているわけじゃあないんですねぇ。 ズバリ、消火が良すぎるんです。 貴方のお腹が逞しいせいで、せっかくのウマゴヤシがこなれちゃって、原型をとどめていませんね。 ですから、貴方はもう、ウマゴヤシだけ食べなさい。 栄養面の不足は錠剤で補うとして、ミキサーにかけると消化がよくなってしまいますから、生のウマゴヤシをバリバリ食べる。 なぁに、貴方くらい丈夫なお腹でしたら、最初はちょっぴりシクシク痛むかもしれませんが、すぐに慣れますよ。 保証します。 それにしても、い〜いウンチしてますねえ。 お返しします』
鑑定士はナディアの『落とし物』をビニールに入れ、先を縛ってナディアの鼻先にもっていった。 ヌルヌルした茶色い塊をつきつけられ、ナディアは大人しく袋を受け取る。
「……鑑定ありがとうございました。 こ、これからは……うま、ウマゴヤシを生で食べて、ちゃんと法律通りのウンチをだすようにします。 今日は……あの、お、お世話になりました……」
頭をさげるナディア。 自分の『落とし物』が入った袋を提げ、ゲスト席へと移る。 ここからは、ナディアも番組進行を手伝い、他の出品にコメントする立場になる。
『次の依頼人の登場です!』
ナディアのような有名人の次は、一般人の依頼人だ。 CCカメラで便に不都合があったものから、ランダムに選ばれてここに来る。 『マハ・スカリー、19歳』 紹介VTRもなく、名前と年齢がテロップで流れただけで、さっさとガラステーブルに案内された。
『それではお宝をご覧ください〜』
司会の合図で少女が気張る。 ミリッ、ムチッ……肛門が軋む音をマイクが拾うも、中々実が姿を現さない。
『ふっ……んっ……んんんっ……!』
きつく歯を食いしばり、次第に少女の顔が紅潮する。 人前で脱糞する恥ずかしさもあるだろうが、それ以上に息む力の入れようが表情に影響していた。 ミリッ、ミチッ、ミチチッ……つぼまった肛門が隆起し、噴火口からあふれ出るマグマよろしく、真っ黒な塊が顔をだす。
『ふぅんっ……んんっ……ふぅん……んはっ!』
コロッ。 コロコロッ、コロン。
テーブルにしゃがんで5分が経過しようという頃。 断続的に喘ぐ中、ようやく少女のお尻が黒い『落とし物』をはきだした。 排便直後で息遣いが荒い中、少女はヨロヨロとテーブルを下りる。 紅潮が引き始めた横顔には、安堵に加えて今更ながら感じ始めた羞恥を漂わせていた。 少女と入れ替わって鑑定士たちがテーブルを囲み、カメラと一緒になって少女のコロンとした落とし物を観察する。
ちゃららら〜ら〜、ちゃららら〜ら〜、ちゃらら、ちゃ〜ら〜ら〜ら〜ら〜〜……。
テーマソングと共にしばし観察した後、鑑定士たちは二言三言相談すると、もといた席に戻った。 すかさず司会の掛け声が響き、続いて電光掲示板が点滅する。
『オープン・ザ・プライス!』
『イチ、ジュウ……チーン』
掲示板の数値はたった『20』だった。
『あらら〜、残念。 あなたのウンチ、予想価値はいくらでしたっけ?』
伏し目の少女に司会がマイクを向ける。
『え……あの……に、二千ユーロです』
『だぁから、そんなにある訳ないっていったでしょう? たかがパンピーのウンチなんだから、現実をみなくちゃ』
『はい……ごめんなさい』
『では先生方、お値段の理由をお願いします』
縮こまる少女を他所に、2人目の鑑定士がマイクを握る。
『うん、これはね、典型的な便秘糞なわけよ。 アナタ、お通じがよくないでしょ? 1日1回、それとも2日に1回くらいしかないんじゃない? あら、3日に1回なの……それじゃ無理ないわねぇ。 これは、俗にいう『ウサギの糞』で、水分が抜けてカチカチになっちゃってるの。 運動不足だったり立ち仕事が足らなかったり、あんまり動いてないとこうなっちゃうから……心当たりあるでしょ? アナタ、可愛いだけで無精っぽいもの。 ダメよ、本当にかわいくなりたいなら、まずお腹の中から綺麗にしないとね。 こういうコロコロが好きなマニアもいるけど、健康的じゃないから、価値としてはこんなトコになります。 しっかり反省して、もっと頻繁にお通じなさい。 とりあえずウマゴヤシが足りてないから、毎日1杯、ウマゴヤシをミキサーした青汁を呑むこと。 約束よ。 はい、返すわね』