セ-6
ほとんど何も言わない山本主任に不安になる。
もしかして、昨日の私、とんでもないことをしちゃった?
「池田?」
恐る恐る私をそう呼ぶ主任に
「はい?」
と、恐る恐る返事をする。
はぁ・・・
眼鏡をとって、目をつぶって
空に向かって大きくため息をついた。
「池田。キミはイケダシオリ?」
何を当たり前の質問をしているのだろう?
「そうです」
アフターファイブに付き合いが全くないとはいえ
もう同じ部署で働いて3年も経つっていうのに。
「イケダ、シオリなんだな?」
「そうですけど」
山本主任のほうがどうかしちゃったんじゃないだろうか?
「池田。西暦と、今抱えている案件を言ってみろ」
その声は、いつもの会社での山本主任で。
何?西暦?案件?
そう思って今の西暦と、今週片付けなければならない案件を答えた私に
再び大きくため息をつく。
「落ち着いて聞け。
今はそれから5年たってる」
「え・・・」
「池田は、俺と・・・3年前に結婚した」
え?え?え?え・・・・!
「しおりは・・・今は俺の奥さんだよ」
山本主任は、寂しそうに笑った―――