断罪開始-4
車両の前後でも、同じような女の悲鳴と嘆きの声が聞こえてきた。
経緯を見守っていた優子は、苦痛に顔を歪ませる星司に駆け寄り、抱き締めた。
「マスター」
優子と触れた瞬間、星司の冷えた心に温かみが差し込んだ。それが広がると共に、徐々に苦痛も和らいできた。
「大丈夫です。お願いします」
「どうしても?」
前回、星司が意識を失った時のことが心に過り、優子は躊躇した。
「ええ、これくらいのことを耐えないと、あの女には対抗できません」
優子も既に理解していた。星司の心の安定を取り戻すには、復讐を果たすことだということを。しかし、不安定な心を少しでも強化をしないことには、それが叶わないことを。恐怖で箍が外れたターゲットの意識に触れることは、星司の強化に打ってつけだった。
それを思い返した優子は、もう迷わなかった。優子はプレイヤー達が見守る中で、服を脱ぎ始めた。
「脱がすくらいは手伝わせてよ」
優子に遅れて移動してきた陽子が、星司の背中越しに声をかけた。
前回までだったら、やんわりと断っていたが、星司は頷き、陽子のしたいように任せた。
陽子は震える手で、星司の上着、そしてシャツを脱がした。シャツを整えて下に置く動作の流れのままに、陽子は星司の前に跪いた。
(下も…)
その手がスラックスのベルトに伸びかけたところで、陽子の動きはピタリと止まった。
「ゆ、優子ちゃん、後はお願いね…」
俯いた陽子は星司の前から体をずらすと、横で服を脱いでいた優子に小さく声をかけた。しかし、優子は予想に反して、この陽子の頼みを断った。
「あっ、ごめんなさい。あたし、まだ脱いでる途中。最後まで陽子さんが脱がしてあげてよ」
「えっ?」
今日の優子は直ぐに全裸になれるように、ノーパンノーブラで、しかもシャツとスカートしか身に付けていないはずだった。訝しく思った陽子が顔を上げて優子の様子に視線を向けた。するとスカートを脱いでいたが、なぜかシャツのボタンを外すのに手間取っていた。
「何してんのよ」
怪訝に思った陽子に対して、優子はニッコリと微笑みながらウィンクで返した。
(余計なことを…)
そう思いながらも、陽子は素直に頷くと、再び星司の下半身に目を向けた。
弟に対する想いが、陽子の心を騒がせていた。その自分の異常な想いは、目の前の弟には筒抜けになっていた。それを承知しつつ、何も言わずにされるままに立っている星司に、陽子は心の中で詫びながら、改めて目の前のベルトに手を伸ばした。
震える手でベルトを弛めてスラックスを下げると、現れた薄い下着を透して雄の匂いが漂ってきた。その匂いに雌の部分が反応しているのを感じながら、陽子は震える手で下着を下げた。
目の前に愛してやまない男の性器が顔を出した。しかし、それは陽子の心をときめかす状態にはほど遠かった。
目の前に現れた元気の無い星司のモノを見た陽子は、そのまま自分が奉仕して、弟に力を与えたい気持ちが膨れ上がった。しかし、それを思った瞬間、星司の身体がピクリと反応した。その小さな動きによって、これ以上のことは拒否されることを陽子は覚った。
星司から直接拒否されることを恐れた陽子は、未練を絶ちきるように、すっと立ち上がった。
「ホント、優子ちゃんは余計なことをさせるんだから。後は任せたよ」
心の動揺を隠すために、少しおどけた口調で言った。
「はい。代わります」
合わせた優子の目に詫びの色が浮かんでいたが、それを口にしない優子の聡明さに陽子は感謝した。今、優子の口からそれを聞けば心の均衡が崩れそうな予感がしたからだ。
陽子に頷いた優子が星司のイチモツの前に跪いた。愛する男の力のないそれにそっと触れた優子は、奉仕をするために口を開けた。