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夢姫伝説
【SF 官能小説】

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第3話-2

ジュリはモニター画面から、ネットワークでタナカコーポーレーション内にある監視カメラを覗き込む。複数ある通信網を瞬時に見分け、その一部に集団でデーター情報を回している場所を発見した。その付近に設置してある監視カメラから、さらに内部の状況を詳しく見る。そこには複数いる作業員達の姿が映し出され、中央付近に見覚えのある男性の姿を見付ける。
(成る程…、そう言う手配で動いていたのね…)

相手が行動に出て来たのなら…、少しお灸を据える必要がある…。そう思ったジュリは、立体キーボードを映し出し、モニターを画面代わりに使い素早い指先でオリジナルのソースコードを作成し始める。
作業が終了すると(これで良し)と、呟きリターンキーを押す。それと同時にジュリの左手にうっすらと光が浮かび上がる。

(電子波動セッティング完了。あとは…)

ジュリは周囲を見渡す。前方に女子大生と思われる2人組の女性の姿を見付けた。彼女達はWBを手に持ち、仲間とのチャットを楽しんでいた。

(あの子達にしよう…)

しばらくしてシンが立ち上がり「降りるよ」と、ジュリに声を掛ける。ジュリはシンの後を追う様な感じでバスの車内を歩いて行く、その時女子大生達の近くを通る時に彼女達に当たり、1人の子がWBを落としてしまう。それを見たジュリが左手を差し伸べて小声で

「電子波動挿入」

誰にも聞こえない程の声で呟いた、その瞬間左手の掌が一瞬光った。放たれた光はWBの中へ吸収される様に消えて行く。

「ごめんなさい」

そう言いながらジュリは、女子大生のWBを拾い上げて持ち主の人に手渡す。それを受け取った女子大生は、何事も無かったかの様にWBを腕に巻き付ける。
2人はそのままバスを降りた。
バスを降りるとシンは、ジュリを見て言う。

「僕は、直ぐそこにある会社に行くけど、君はどうするの?」

「私は…図書館に行きたいのだけど…、どの辺にあるのかしら?」

「図書館なら、ほら…向こうに市役所が見えるだろ、その隣だよ」

シンは、目の前に見える白い屋根を指した。

「分かったわ…じゃあ、仕事が終わったら迎えに来てくれるかしら?」

「仕事が終わったらって…、今日は遅番だから終わるの遅いよ…夜8時過ぎになるかもしれないし…」

「それでも良いわ。読書しながら待っているから」

ジュリに何を言っても無駄か…と思ったシンは「分かりました。迎えに行きます」と、答える。

2人の話が終わる直後、白のクーペスタイルの車が勢い良く走って来て、キキーッ!とスリップ音を立てながら急ブレーキして止まる。
僅かにタイヤのゴムが焼けて煙が立ち上る中、クーペスタイルの車の中からサングラスを掛けた若い男性が現れた。スーツが肩からよれて、服が少しシワになっていた。顔には無数の赤いキスマークが見られた。

「初めましてオダ・シン君、お取り込み中申し訳無いのだが…私はこう言う者です」

彼は、WBを指先で、軽く弾き自分用の顔つきの名刺を映し出す。
『タナカコーポーレーション研究課ミヤギ』と、そこには表示されていた。

「失礼を承知の上で申し上げるのだが…少しだけ、私との話に付き合ってもらえないかな?時間は取らせないつもりだけど…」

突然自分の前に現れた不思議な人物に対して、シンは立ち止まっていた。

「何なんですか貴方は?」

シンは反抗的な態度を見せた。
ミヤギはチラリとジュリの方を見る、麦わら帽子を被り、お下げ髪をしている姿からは相手がアリサとは判別しにくかった。しかも女性には表情があった。
タナカコーポーレーションに限らず、他のメーカーを含めて、生産されるアンドロイドは、そのほとんどが無表情と言って良い程のモノ…。ミヤギは別人を相手にしているかも…と一握りの不安を抱いていた。

「幾つか質問させてもらいたい。返答次第では、撃つかもしれないので覚悟して頂きたい」

ミヤギは懐の内側に隠し持っていた光線銃を取り出し、それをシンに向ける。

「くッ…」小型の光線銃を向けられたら打つ手が無かった。光線銃の威力は秒速コンマ0.1秒で、相手の身体を貫通させてしまう。しかも…噂では100m離れた鉄板さえ軽く遮断させてしまう…と言われている。そんな物に撃たれたら、一瞬であの世へ逝ってしまう。相手の言う通りにするしか無かった…。

「イヤッ!コワイー」

ジュリは頭を抱えてしゃがみ込んだ。その時、左手を強く握り込んで「電子波動…オン」と、小声で呟く。



ジュリが呟いた瞬間、バスを降りて駅方面に歩いている女子大生のWBが軽く点滅した。

「あら?貴女のWB…今、点滅したわよ?」

「え…本当、メールかしら?」

女子大生は、画面を開いて中を確認するが、受信された形跡内容の項目が見付からなかった、不思議そうに首を傾げながら女子大生はWBを腕に装着させる。



女子大生のWBが点滅した直後、タナカコーポレーションの本社の全ての電源がシャットアウトした。社内の全てのコンピュータシステムを始め、電気やエアコン及び、空気清浄機まで一時的に機能停止した。社内にいるほとんどの従業員が停電か?と…思いながら天井を見上げる。しばらくして社内のシステムは全ての機能が戻り、社員達は業務を再会し始める。

「何だったんだ?」

コンピュータフロアを見回っているタナカが何気なく呟いた…。その直後、社員の1人が大声で叫んだ。

「か…会長ー、た…大変です!」

「どうした?」

「アリサに関するデータが全て抹消しています!」

「何だって!」

「こちらもです。アリサに関する記録が、見付かりません!」

「バックアップを取れ、保存のデータが残っている筈だろ!」

「ダメです、バックアップデータ及び、過去の記録全てが抹消しています」


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