おやすみなさい-7
そう、あの時人を呼びにいっている間にマサは息を引き取り、短い生涯を終えたのでした。
皆、私を慰めましたが、もう少し早く人を呼べれば、と思う私は落ち込むばかりで暫らくはご飯も食べず夜も眠れず、ただただ後悔の日々を送りました。
4年後、失意に暮れる私を心配し、前暮らした街へ戻ろうと提案した父について私はこの村から去りました。
その後は、生涯の人と出会い結婚し二人でひた向きに働きながら子供を育て、孫の姿まで見ることが出来ました。父は曾孫を見る前に亡くなり、旦那も定年を迎えてすぐに逝ってしまいました。
一人になってしまい、のんびり暮らそうと思っていた矢先に体調を崩し、入院。きっと、もうゆっくり休みなさいと言うお告げなんでしょうと思っているところにこの不思議な出来事。
もう、私は同じ思いはしたくないんです。
神様は、何故こんなことをするのですか…
崩れた小屋があっという間に、涙でぼやけてしまいました。
「…みっ…ちゃ…」
その時、マサの擦れた蚊の鳴くような声が聞こえ私はハッとしました。
私はもう後悔したくない!と。
「私は未来を変えにきたんです。また同じことなどしませんっ!」
ガタンッ
ガタンッ
息を切らしながら、私は自分の手など気にせずひたすらに板を退けます。痛みの感覚は、不思議と感じなくてただ声のするところの板を退け続けました。
「マサっ!マサっ!」
どれくらい時間が経ったのでしょうか、とても長く時間を感じながら退かし続け、やっとマサの腕が見えました。
血の気のない腕は、だらんと垂れて止まった涙がまた溢れでてきそうでした。
「み…ちゃ…ん、ごめ…ん花…が心配……で」
その言葉が鼓膜に響いた瞬間。私は、またひたすらにマサの上に乗る板を退かしはじめました。
「マサ、いいんです!気にしなくていいんです!だから頑張って」
生きてる!
生きてる!!
やっと手の痛みが感じてきましたが、そんな事は関係ありません。マサが生きている、それだけでいいのです。
ハァハァハァ…
自分の呼吸をうるさく感じながら、私はやっとマサを小屋から出すことが出来ました。
血の気は引き、ぐったりとして怪我をしていますが、生きています。
マサの鼓動は、確実に動き続けています。
「待ってて下さいマサ!今おばあちゃん呼んできます!」
もう体力は枯れ果てている筈なのに、不思議と足はおばあちゃんの家に走り続けます。
神様、ありがとうございます。
私は、未来をかえれました。