おやすみなさい-6
「あそこはいつ崩れるかわからないからね」
その言葉が前の記憶と重なり、私は更に唇を噛む力を込めました。
隣の部屋を見ればマサはまだスヤスヤと寝息を立てて寝ています。その寝顔に私は、決意を立てます。未来を変えてみせるからね、と。
「マサ、私と約束して。今日は絶対外に出ないと約束して下さい」
「えっでも、小屋の花が」
「明日で大丈夫ですから、ね?絶対ですよ」
「…うん」
寝呆け頭のマサに私は真剣に懇懇と言い聞かせました。
余りにも言い過ぎて不審がられましたが、そんな事は気にしません。まずは、マサの安全を第一にしなければならないのですから。
カチカチカチ…
時計はゆっくりとですが時を刻み、気が付けば辺りは曇っている所為もありますが暗くなってきていました。私は、少し気が抜けたのか、玄関が見える位置にずっといましだが今日初めて少し横になりました。
カタン
小さな物音。目を開ければ、先程から5分も経っていませんが私は寝てしまっていたようです。
そして、すべてはその5分もしない間に劇的に変わっていました。
「おばあちゃん!マサは!?」
マサがいない事に気が付き。私は家中を探し回りました。おばあちゃんもマサがいないことに気が付いていなかったようで焦って玄関を見に行きました。
「みすずちゃん!マサの靴が…ない」
その言葉が耳に届いた瞬間。私は靴も履かずに飛び出していました。
マサっ!
マサっ!!
お願い神様!お願いですから、あの日と同じはもう嫌です!
足の皮が捲れようとも、雨が容赦なく打ち付けようとも、私は我武者羅に走り続けました。
場所は、あの日と同じ場所です。
「…………………ま…さ」
悪い予感は当たるのでしょうか。マサはあの日と同じ場所にいました。
無残に崩れた小屋。
微かに聞こえるマサの呻き声。
近くに落ちたマサの片方の靴。
すべてが、寸分の狂いなく同じで。
すべてが、私を恐怖に陥れました。
「マサっ!マサっ!」
木造の小屋は、原形を留めることなく崩れ、中には木材が折れ、鋭く尖っているものも有りました。
どこからどうみても女一人では対処出来なくて、人を呼びに……