素敵な初詣-1
家族連れカップル友人仕事仲間、様々な人達が新年を祝う為ゾロゾロと集まっている。こうしてみると人っていいなぁーとも思える、参拝客の多くは笑顔に満ち溢れている、目にしているこっちまで微笑ましい気分になる。
初詣には毎年足を運んでいる、別に強く意識している訳ではないが、毎年初詣しないと気が済まない、恒例行事だ、と考え毎年起こしになられる方は多いと思う。
沢山の人が楽しそうに食べたりおみくじを見たりしている中、僕は人の邪魔にならない木の近くでポツンと突っ立っている、その理由は一つしかない。
「ハッピーニューイヤー♪」
「あ♪」
ようやく待人が来た、可愛らしい桃色と花柄の着物を身に纏って。
「お待たせ!」
「わぁー綺麗だねぇー。」
後に彼女の母親が自分の娘の為と嘗て自分が彼女と同じ年代の時に来ていた着物をプレゼントしたそうで、その時の母はとても楽しそうだったとか。
それに対して僕は普段通りの服装で、何だか地味に見える。
「風馬君は着ないの?」
「着物をかい?…そんな、考えた事もないよ。」
そもそもあんまり正月とか興味もないし、ただ去年はお母さんそれとお父さんと初詣に行ってたけど今年からはそれは叶わないのが少し寂しいと心に引っかかるくらいで。
「うーん、見たいなぁー風馬君のふんどし姿。」
「着物でしょ!いいよぉー着付けって結構面倒なんでしょ?着たら着たらで下駄靴で足が痛くなるとかあるじゃん、そもそもそんなお金もないし。」
「でもカッコいいと思うよ、黒いクールなのを身に纏ったら…はぁはぁ♪」
急に変な息荒いをし出した。
「縁日で自分は着物着てるのに相方は普段着だと腹立つじゃない?」
「そうかなぁー、さも当然のように言ってるけど。」
「そんなゴミみたいに薄汚い普段着で本当に良いの?」
カッチーン!なんつー言い草だ!
「……帰る。」
「わーわーごめんってばぁー。」
「ゴミはないでしょうがぁー。」
「だってぇー見たいんだもーん、風馬君可愛いからきっと似合うのに…。」
おねだりがまた凄い、彼女にせがまれるまで考えた事もないよ。未練がましく顔を濁らせ僕をじっと見つめる…。
「いいよ、君に着物を見せれただけでも充分だし…。」
別に押し負けた訳じゃないけど、折角だし彼女に喜んで貰いたいから。
「やれやれ、折角神社まで来たのにまた家に戻らないといけないね。」
「えっ、まさか。」
何だろ、僕までワクワクしてきた。