禁断のデュエルの時-1
皐月ちゃんのいれてくれたコーヒーを飲み干した俺を見届けて、白鳥は口を開いた。
「話の腰をおられてしまったが、続きだ。あの場所でカオス爆発が観測されている。」
「そのカオス爆発であのホルドミドが生まれた訳ですか」
緑は普段は見せないシリアスな顔であごに片手を添えて、その手の肘をもう一方の手で支えている。
またもや皆さんには説明しなくてはなるまい。
ドミドは実は三種類いて、緑と凪が倒したのはネルドミドと言って主に虫や単細胞生物の様な形をしている場合が多い。だが、映像に映し出されていたのはホルドミドと言って、大量のカオスによって生まれる。 力はネルドミドの比ではない、ちなみに人型をしている場合が多い。
「好野、なにをボーっとしている。 きちんと聞いてもらわなければ困る」
「聞いてるよ、さっさと進めてくれ」
白鳥は咳払いをして話始めた。
「でだが。先ほどの奴、これからはデスと呼称するが、デスは少しずつ姿を現しながら我が校の方面に向かっている」
「で? 俺達にデスがきたら退治しろと言うことか?」
白鳥はゆっくりうなづく
「そうだ」
「あの〜、私は関係ないのでは?」
凪がゆっくりと立ち上がって聞いた。
「何を言っているのだ。我が校の平和のための行為に関係無いことなどいっさいないのだよ。 ただでさえ戦闘向きの能力者が少ないのだ。それに、君は反論できる立場にはいないと思うが」
白鳥の言葉に凪はまた力なく座りこんだ。 図星だからな。
「さらに…」
皐月ちゃんが愛くるしい笑顔をそのままに(まあ俺は抱きしめてしまいたい衝動に理性を総動員させて対抗するのに必死であるが)すこし暗い声で話し始めた。
「デスは姿を現す度にある言葉を叫んでいるそうです」
「それは世界の代弁者がどうとかっていうあれですか?」
「それもありますが…。 実は… 『プロト100』と…」
俺は自分がその瞬間どんな顔をしたのかさだかではないが。たぶん親の敵にやっと出会えた時のような。牛若丸を見つけた弁慶のような。あるいは笑っていたようにも思う。
「白鳥!」
「何だ」
白鳥はノンフレームメガネのブリッジを右中指であげた
「お前の事だ。もうここに奴が来る時間を割り出しているんだろ。 教えろ」
白鳥の胸ぐらをつかまんとするほどの勢いで詰め寄った。
「顔が近いぞ… 。今日の深夜11時00分。 前後一時間以内。 まあ、デスがこのままの移動速度を維持したらの話だが」
「充分だ」
俺は皐月ちゃんを一瞥して張りつめた心に安らぎを軽く取り入れる。 生徒会室の扉を勢いよいあけ走り出た。
奴は俺が殺る。 いや、殺る義務がある。
〜ここから緑目線でお送りします〜
広樹さんが出て行った生徒会室は静寂が支配していた。
「好野について行かなくていいのか?」
「うん。 たぶん行っても力になれないし」
私と凪ちゃんは白鳥さんと西野城さんに軽く一礼して生徒会室を後にした。
西日はもう地平線に隠れ。闇が来ていた。
「気になったのだが。 好野とは幼なじみなのだよな?」
「うん。ずっと一緒だった。 幼稚園も小学校も中学も違うクラスになった事はなかったよ」
私達は帰宅時間を過ぎた誰もいない校門から出た。
「聞きたいのだが… プロト100とは何だ? 好野がこれを聞いた瞬間に人が変わったみたいだったが…」
学校の近くにある小さな公園のベンチに腰掛けた。 前の自動販売機でオレンジジュースを二本買い凪ちゃんに一本わたした。
「プロト100って言うのはね。ナノ・マシーンのプロトタイプの内で最も強力と言われているの」「それが広樹とあのデスとか言うドミドとどういう関係があるのだ?」
凪ちゃんは受け取ったジュースを開けもせずこちらに向かって真剣な眼差しを向けていた。