第5話『シットバトルクラブ』-3
サードステージ。 既にお腹を大きく膨らませた4名が『バルーン型アナルプラグ』を抜かれ、机の上に設置された『アヒル型オマル』に跨る。 イチジク浣腸2本が挿入され、先に我慢しきれず排泄してしまった2名が脱落する。 最後まで耐えた2名はファイナルステージに進む前に、再度『バルーン型アナルプラグ』で肛門に栓をされるため、強制的にしばし排泄を封じられることになる。 この時点で選ばれた2名の違反者は、たいてい歩くこともできないレベルで消耗しているため、ファイナルステージ会場まで付き添いの介助なしに移動できる例(ためし)は少ない。
ファイナルステージ。 『アナルプラグ』から伸びたロープをスタート地点の柱に固定し、その上で『1L』の空気浣腸を『アナルプラグ』の上から抽入する。 肛門内の『バルーン』の気圧を弱めたところで競技が開始され、決勝進出者はゴールの『洋式便器』を目指す。 便器に到達する1つ目の道は、力づくでアナルプラグを引き抜いて(バルーンの気圧が弱まっているので、全力で引っ張れば抜くことができる)600メートル先の便器に脱糞する道だ。 メリットとしては、プラグを抜いた直後に込みあげる便圧に耐え、歩いても走っても構わないが、兎に角体勢変化による腹痛を堪えることが出来ればより早い時間で脱糞することが許可される。 デメリットとしては、既に便意に襲われている状態でアナルプラグを抜いてしまうと、あっけなく脱糞してしまう可能性が高い。 そうすればここまでの我慢はフイになり、会場を汚してしまった負い目だけが残ってしまう。 2つ目の道は、弛んだアナルプラグのみを頼りに、その場で更に30分間排泄を我慢する方法だ。 ゴールの『洋式便器』は分速20メートルでスタート地点に近づいてくる。 ゆえに30分間我慢すれば、目の前にゴールそのものがやってくるわけだ。 メリットとしては、さしたる動作の必要がないため、ジッと我慢し続ければいい。 デメリットとしては、既に排泄衝動に耐えうる強度ではなくなったアナルプラグのみで、30分という長時間排泄衝動と闘うことになる。 好調時ならまだしも極限まで色々詰め込まれた状況で30分我慢するというのは、字面以上に過酷な選択だ。 ノロノロと近づいてくる便器を最後まで待つことが出来る精神力は、誰しもが持ち合わせているわけではない。
今回の挑戦者は、2人とも『走って』便器に辿り着こうとした。 けれど、1人はアナルプラグを抜いた直後に、もう1人は便器まであと10メートルというところで転んでしまい、結局2人とも道半ばでウンチを漏らしてしまう。 ウンチが大量なのはもちろん、空気浣腸までされているためオナラが凄い。 凄まじい音を立ててお尻から茶色い噴水を出した2人は、泣きながらファーストステージの椅子に連行されて『マスク付チューブ』に繋がれた。
なお、番組撮影が終了した時点で、ファイナルステージをクリアした違反者は無条件で解放される。 それ以外はアナルプラグ装着の上、強制的に『特製ジュース』を体内に5L注入の刑だ。 特製ジュースとは、番組制作で生じた残飯、生ゴミその他はを巨大ミキサーで撹拌したもので、『セカンドステージで食べ残された軍馬がひりだす練り物と流体食』も含まれる。 ミキサーの上に軍馬たちが屈み、身体の中から色とりどりの残りモノを放つ姿は、綺麗な肌色と相俟った幻想的――というよりは極彩色の光景だった。 制限時間の1時間内に5Lを呑んだ違反者から順に椅子から解放され、アナルプラグを装着したまま『2時間』排泄を我慢できれば、晴れて無罪放免だ。 1時間で飲めなかったり、アナルプラグ付きで我慢する途中に暴れたりすれば、画面の外へ連行される。 連行された先がどうなっているのかは非公開だ。 ただ、碌な展開でないことだけは確かなため、参加者は必死で喉を鳴らし、汚物に等しい特製ジュースを腹に収める。
50名が並んで特製ジュースを呑むシーンと平行して、『腸内容量拡張訓練』『膀胱拡張訓練』のテロップや『腸内容量拡張手術』『膀胱増設手術』が紹介される。 司会曰く『軍に奉仕すれば特定の肉体改造手術が受けられる』らしい。 『無痛』『無傷』『無副作用』な『3無術式』だ。 また、司会者曰く『軍に法令違反者を通知すれば、いつでもどこでも排泄を許可される『特殊排泄ポイント』が支給される。 身近に法令違反があれば、積極的に連絡しましょう』だとか。 随所で密告を明るく促すのも『2ch』番組の特徴だ。 『問い合わせは直接最寄りの騎兵にどうぞ』と司会者が明るく挨拶し、番組に『THE END』のテロップが流れた。
……。
排泄制限の違反者に男性と女性のどちらが多いかといえば、確実に男性といえるだろう。 元々野外での排泄に抵抗のない男性は、屋外柱や溝への放尿であっけなく検挙される。 では、そういった男性はテレビに出演するかというと、ここでも出演者はほぼ全員が女性だ。 では男性違反者は番組に出ないで済むからラッキーかといえば、決してそうではない。 つまり、男性違反者は更生の機会すら与えられず、即刻『刑務所』に収監される。 番組がいかに非人道的と罵られようとも『刑務所』とは比較にならないだろう。 何しろかつての『刑務所』ではなく、運営母体が軍にとってかわった『刑務所』だ。 まだ新しい『刑務所』を出所した例がないので詳細は不明だが……それでも、市民みな『刑務所』に対して特別な畏怖を備えている。
……市民を待ち受ける不条理地獄、まだまだ始まったばかりである。