誘い-3
ところが、突然、それまでイトウのにこやかだった顔つきが変わったのだ。
「奥さん、そのお礼のことなんですが……。
実は奥さん。……困ってるんです。
ちょっと、相談にのっていただけませんか」
ほら、きたきた、とケイコは思った。
「はぁ……?」
美紀子は、顔を上げ、急に警戒心を強めた。
「奥さんっ!」
ギラッとした目でイトウは美紀子を見た。
「奥さんが、パソコンで見てた動画のことなんですが……」
「えっ!……やだぁ」
美紀子は俯いた。その顔が、みるみる真っ赤になっていくのがわかる。
「実は、あの動画は、……あれは俺たちが作ったものなんです」
よく言うよ、とケイコは思った。確かにイトウが所属するプロダクションが出しているDVDだったが、イトウのグループが作ったものでは無かった。
「ええっ?」
美紀子は驚いて顔をあげた。何が何だか、さっぱりわからないという表情だ。
「奥さんが、俺たちの作った作品を見て、昼間からオナニーしてくださってるなんて思うと、……もう、制作者冥利につきます。
制作してよかった。なんて、……ホント」
「そんな、オナニーなんて……」
恥ずかしそうに目線を下げた。
「いいえ、いいんですよ。遠慮しなくて……。
女性の身体はデリケートですから……急に疼いてしまうこともあると思います。
そんなときのために、俺たちは制作してるんですから……これで、オナニーしてもらえるんなら、本望ですよ。……光栄の至りです」
イトウはチラッとケイコを見た。応援を頼むということを目で訴えている。
ケイコは軽く肯いた。
「恥ずかしがることなんかないですよ。……私だって毎晩のようにしてるんです」
「えっ、あなたが……。
そうなの?……」
美紀子は驚いた表情でケイコを見た。
「だって、制作現場で、あれだけのことを目の前で見せられれば、……ねぇ。
普通の女の人だったら濡れてきますよ。
酷いときなんか、パンツの中がヌルヌルになって、気持ち悪いほどに……。
仕事だからしかたがないけど、……演技もあるんでしょうが、女優の逝く姿を目の当たりにして、喘ぎ声を聞かされていれば、思わず挿れて欲しくなることもしょっちゅう……。
だから、家に帰っても悶々として……情景を思い出して……。
ああっ、恥ずかしい……いやだぁ、みんなの前で言っちゃった」
「まぁ、そうなんですか?」
「ねぇ、奥さんも一度、撮影の現場を見たくないですか?
オナニーに使う動画はこうやって作ってるんだっていう……。
そして、見ているうちにオナニーやりたくなったら……もしかして、実際に出演しちゃったりして……」
「いやだぁ。なんてこと……」
「ねぇ、奥さんって……ホントはマゾなんでしょ」
ケイコが立ち上がって美紀子の後ろに回った。
「何、言ってるの?
ちがう、……ちがいます」
そのとき、イトウがパソコンを手に近づいてきた。
「だって、見てたDVDはSMもので、……ほらっ」
イトウがパソコンの動画を再生して見せた。画面いっぱいにして、音量も最大していた。
画面は、巨乳を砲弾のように白い綿ロープで括られて、両脚をMの字に縛られて、股間にバイブが出し入れされて白く泡立っている場面だった。
いたぶられている女の喘ぐ声が生々しく耳に入ってくる。
「ほらっ、もうすぐ逝っちゃう場面だ……。
奥さんも、この女に自分を置き換えて、逝きたかったんだろう」
その画面に合わせるかのように、いつの間にか、美紀子の後ろに回ったケイコが、服の上から乳首を抓っていた。同時に、太腿に手を伸ばし、パンティをかきわけ、秘唇に触れてきた。
「あら、奥さん。……もう、ぐっしょりじゃない」
「やめて……ください。触らないで……」
美紀子は俯いて、顔を真っ赤にしたままだった。
ケイコの指先は美紀子の尖りを捉えていた。そして、女ならではの手つきで、揉み込んでいった。
さらに指先に力を込めると、美紀子は指先だけで吊り上げられるかのように、やすやすと立ち上がってしまった。
そして、テットが構えるカメラの方にさりげなく身体を向けていったのだ。
「ああっ。……いやぁ」
「いいのよぉ。遠慮しなくて……。こんなに硬くしちゃって……。まぁ、どうしましょう。……恥ずかしいわねぇ。
さっき、奥さんは、マンコからお尻の穴の隅々まで見られてるんだから……。
さっ、一度気を遣ってさっぱりしましょうよ」
二人に見られていることと、巧みなケイコの指の動きと、パソコンから流れてくる喘ぎ声が相まって、顔を赤らめることしかできなくなっていた。もう、ケイコの指先に逆らえなかった。
「あん.……あぁぁ……」
「あらっ、もう逝っちゃいそうなのぉ?……逝くときはハッキリ言ってね」
美紀子は、ケイコに抱きかかえられながら、膝をガクガクさせ始めた。
「あああっ……逝っちゃう」
「すごいわぁ。ビクビクさせちゃって……。
いいのよぉ。……逝きたかったのね。……さっきから不完全燃焼が続いていたものねぇ」
「ああっ……またっ」
ケイコをはね除けるかのように、身体全体を伸ばすように震えている。
「すごいわぁ。こんなに痙攣させて……。
いっぱい逝っていいのよ。……もうじゅうぶん満足して、ここが柔らかくなるまで、揉んであげるから。……どんどん逝きなさい」
その後も数回硬直を繰り返し、逝っていることを身体でケイコに伝えたのだった。
「ああぁ、……もう……」
指先の尖りが柔らかくなってきた。
「どう?満足した?」
「ええっ……。恥ずかしいわぁ」
ケイコを振り払うように、ドサッと崩れた。
その時、カメラ係のテットが上手く撮れたというOKサインを出していた。