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離婚夫婦
【熟女/人妻 官能小説】

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グッドモーニング-4

「おはようございます」
 豊川は、望未との電撃的な一夜が過ぎ去ったことなど、微塵も匂わすことなく、いつも通りの表情で義母の家にやってきた。
「あら晃彦さん。おはようございます。昨日はありがとね。望未の事だから憎まれ口でもたたかなかったかしら」
 昨夜の帰る雰囲気を見ていた百合子は、諍いがあったのではないかと心配していたようだった。
「いえ、特に何も。会話にすらならないほどでしたので・・・・・・」
 昨晩からのことは、当分の間、二人だけの秘密にしておこうと、相談していた。
 望未のああいう性格から、恥ずかしさもあって、いきなり友好的になりましたとは言えないらしい。軽く『やり直すから』とは言いづらいようで、とりあえずは小康状態であるようにしていきたいとの要望があった。
 豊川としては、少なくとも義母と菜緒ぐらいにはそれとなく伝えておきたかったのだが、望未は頑なに拒否した。
「自分の中でもう一度整理してみたいの」
 昨晩のことは、一過性であり、喉元過ぎればこれまでの冷えた関係に戻ってしまうのが心配だと言っていた。
 確かに、豊川の気持ちの中にもそのような不安はあった。昨晩のアレは、あくまでも気まぐれから起きたもので、関係修復するつもりはないと言われてしまうのではないかと、危惧する部分もある。
 望未曰く、豊川が思っているような気まぐれでしたことでは無いし、出来るだけ前向きに進めていきたい気持ちは間違いなくある。そのことを冷静になった時に、もう一度ゆっくりと考えてみたい気持ちも強いらしい。
 復縁方向は間違いないのだが、気恥ずかしさが勝ってしまうこともあって、周辺にはもう少しゆっくりと浸透させていきたい思いが大きい。
 豊川としても、望未の性格をわかっているので、無理強いさせることはせず、流れに任せてみようと思った。
 出来れば、菜緒ぐらいには、伝えておきたいのだが・・・・・・

「そうだったの・・・・・・まあ、仕方ないわね。私も、恐らくお父さんも残念がってるだろうけど、当人同士の問題だからね。他の者がやいやい言ってもね」
 勘の鋭い百合子のことだ、もしや二人の嘘が見抜かれてしまうのではないかと、豊川は冷や冷やしながら一挙手一投足に細心の注意を払った。
「何にせよありがとうございました。今日はよろしく頼みますね」
 百合子はあらためて礼を言い、豊川を朝食へと誘った。

 豊川に遅れること15分。豊川がリビングに向かおうとしたタイミングで望未も到着した。
 ドア越しに、望未と目が合った。そこには、薄化粧を施し、礼服に身を包んだ清楚な望未がいた。先程まで痴態を尽くし、その顔に精液を浴びていた女と同じ顔には見えない。
 ニコリともせず、昨日までの冷戦状態が続行していることに何の疑いも持たせない佇まい。これならば誰にもばれることはないだろうと豊川は思った。

 長い一日が終わろうとしていた。
 夕刻から始まった通夜は、通夜振る舞いまで滞りなく終わった。
 豊川と望未は、昨日までの距離感を保ち、会話も一切なし。周囲にまさかあの後、あんなことがあったなんてと匂わすことも無く、淡々と喪に服していた。
「あぁ、やっぱり気疲れしちゃうわね」
 最後の弔問客を見送り親族だけになった部屋で、百合子が大きく息を吐くように言った。
「まあね、故人の親族っていっても、イコール接待側でもあるしね」
 まとめていた髪をほどきながら、長女の真澄も疲れたように腰を下ろした。
「町内会の人が、色々と手伝ってくれるから、そんなにやることが多いわけじゃないんだけどねえ」
「そんなこと言ったって義姉さん。なんやかんやと気を遣うのは私たちなんだから」
 おしゃべり好きな義妹が、私も疲れてるのよと言わんばかりにまくし立てた。
 本人は、大したことしてない癖にとその場の全員が思ったに違いない。そこら辺の知った顔に声を掛けては世間話ばかりしていたことを知っている親戚たちは、いつものことだからなのか、特に気にする素振りも見せず淡々とお茶をすすっている。
「いつ、まで休み取っているんですか?」
 豊川は、横で通夜振る舞いで余った揚げ物を食べている克成に話しかけた。
「うん。明日までは何とかね。一応、俺だけは明日の夜の便のチケットを押さえてあるんだ」
 北海道から出てきている義兄は、明日のうちに北海道まで戻るとのことだ。
「次会うのは向こう(北海道)かな」
「そうですね。近いうちにまた行くことになると思いますよ」
「その時は遠慮なく連絡してくれよ。向こうで飲もうじゃないか」
 望未と別れた後でも、義理の兄弟として付き合ってくれるというのか、それとも単なる友人として迎えてくれるのだろうか。その辺は計り知れるが、気の良い義兄で良かったとあらためて思った。
「で、昨日は何の話もしなかったのかい?望未ちゃんと」
 朝、百合子と話をした以外、昨日のことを詮索してくる親戚たちは誰一人としていなかった。が、多分、ここにいる誰しもが、昨日の二人の行方が気になっていることは間違いなかった。
 克成だから、聞くことができたのだろう。興味本意ではないことは、豊川にもわかっている。気のイイ義兄のことだ、自分たちのことを心配してくれているのだと思った。
「ええ。中々に気まずいもんでしたよ。もう何年も口をきいていない元嫁と夜道を歩くなんて」
「ははは。そうだろうな。俺でも嫌だよ。でも、お義母さんも心配してるんだよ。うちも毎年、正月かお盆にはここに来ているけど、年々望未ちゃんが疲れていっている様子が見て取れたから、大変なんだろうなって思ってたんだよ」
 どこかで割り切って生活していれば、そこまで逼迫した生活にはならないはずだ。だが、望未の性格からして、適当には出来なかったんだろう。肩に力が入りまくりの日々だったことは、想像に難くない。


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