7月1日-1
小さな頃からずっとずっと願ってた事。
だんだんと陽射しが強くなってきて、夏が目の前まで来ているのだと改めて思い知った。
窓から見える景色も心なしか活気づいていて、私は思わず目を背けた。
私と正反対だ。
私は、生まれた時から体に爆弾を抱えていて、入退院を繰り返していた。
だから、自分は長くは生きられないのだと薄々気付いていたし、それを医者に宣告されても、ああ、やっぱり。と思うだけで特別何も感じなかった。
心残りがないわけではない。でも、後悔はしていない。
ふと、枕元の時計に目をやると3時を少し回ったところだった。
あと一時間もすれば彼が来るだろう、そう思い私は仮眠を取るためにゆっくり目を閉じた。
彼と私はいわゆる幼なじみで、人にひやかされるような関係ではない。
けれど、私の短い生涯でたった一人愛した人であり、世界の全てであることは確かだった。
彼は暗く息苦しい病室から、いつも私を外へと連れ出してくれた。
私の世界に光を届けてくれた。
だから、私は彼の笑顔が曇らないように、一生懸命生きてきた。
消えていく私が、彼にしてあげられる事などこの位しかないから。
人の気配がして、私はゆるゆると目を開ける。
目の前には、少し不安気な彼が私を覗き込んでいた。
「…おはよう。」
薄茶色の髪が揺れる。
土埃とお日さまのにおいがした。
私は肺いっぱいに空気を吸い込む。
このにおいを二度と忘れないように。
「おはよう。気分はどう?」
近くにあった椅子を引き寄せながら彼は尋ねる。
「うん…あんまり良くない。今日の晩ご飯ピーマン出るから憂鬱…」
彼は笑いながら私の髪を撫でてくれる。
それが心地良くて私は目を細める。
優しい笑顔、あたたかい手…
あとどれくらい感じていられるのだろう。
そう思うと切なくて涙が出そうになる。