第12話 模擬エスコートD-1
〜 2番の学園祭 ・ 学園祭 ・ 〜
学園祭は文化部が発表する場であると同時に、クラスの催し物も多々あります。 当然、部活だけに関われる人数は限られていて、例えば『吹奏楽部員』であっても、クラスの模擬店に動員されて部活に関われなかったりする例はザラだそうです。 部活発表できるのは、その部で最も相応しい人だけ。 大抵は『部長』だけが学園祭当日のデモンストレーションを担当し、例外的に複数必要な場合も最少人数になります。 そういえば私達C−2組でも、文化部に所属する生徒は15名以上いますけど、実際にクラブ発表に関わる人は1人もいませんでした。 そりゃそうですよね、先輩の壁は新入生が上回れるほど薄っぺらいわけありません。
全身に『地図』をボディペイントされた『看板役』のCグループ生は、保健委員の気つけで元気を取り戻し、また元の直立姿勢に復帰しました。 彼女のオッパイに描かれた『付近案内図』でもって、クラブハウス文化部棟にある部活の配置を確認します。 まだ見ていない文化部は『吹奏楽部』『将棋部』『カルタ部』『演劇部』『茶道部』……結構たくさんありますね……『手芸』『軽音』『ジャグリング』『マジック』『クイズ』……うわ、こんなにあるんですか。 演劇部の公演は本番当日のみですので、部室を訪れたところで肝心なものは見せて貰えません。 なので『演劇部』以外に鑑賞時間をとることにして、【A2番先輩】が真っ先に向かった先には『将棋部』と大書した立派な看板がかかっていました。
……。
『将棋部』
壁には詰将棋(すべて『都詰め』になっています)が並べてありました。 なお、学園生は『都詰め』のことを敬意を込めて『オマンコ詰め』と呼んでいます。 盤面の中央で詰ませる状況がオマンコに似ていることからつけた名前だそうです。
部屋の中央に将棋盤があり、そこに正座していたのは同寮の【B31番】先輩でした。 物静かで、いつも物腰が穏やかで、数少ない『あまり怖くない』先輩です。 なるほど、将棋部と知って違和感がありません。 目隠しで顔を覆っていることと、両手を後頭部に回して括っている2点以外、ごく普通の佇まいです。 『目隠し対局中! 参加希望の方は対面にお座りください!』と張り紙があり、【A2番】先輩は躊躇うことなく腰を下ろします。 気配を察知した【B31番】先輩が深々と頭をさげ、互いに『お願いします』と礼をしてから一局が始まりました。
先手、【A2番】先輩。 『7六歩』、自分の手を声に出します。 応じる後手、【B31番】先輩。 手は縛られて動かせないため、声で『3四歩』と動かす駒を告げ、【B31番】先輩に替わって【A2番】先輩が駒を動かしました。 目隠し将棋……実際に見るのは初めてです。 駒の動きを全て記憶して将棋を指すという、素人裸足の技術です。 最終的には46手の短手数で【A2番】先輩が投げましたが、お互い全く考慮時間を使っていません。 【A2番】先輩の滅茶苦茶な指し手に惑わされず、淡々と最適手を続けた【B31番】先輩は圧巻でした。