衝撃の放課後-2
学校に到着した頃、それはいつもの見慣れた顔とはまた違った顔をみせていた。
グラウンドから聞こえてくる、野球部の掛け声。
校舎裏の体育館からここまで響いてくる、バスケ部のドリブル音。
校舎を見上げれば、開け放した窓から飛び込んでくる吹奏楽部の楽器の音色。
帰宅部同然の友美にとって、夕暮れ時の学校の顔はなんだかもの寂しく、そしてどことなくノスタルジックな気持ちにさせた。
昇降口も閑散としていた。
ただジメジメした空気と、下足棚の独特の臭いに思わず顔をしかめてしまう。
ただ自慰行為をするためだけに学校に戻った友美を、誰かが見ていたらなんと思うだろうか。
誰かに見つかる前に、どこか人気のない所で思いっきり淫らになりたい、その思いも相まって、友美は自分の上履きに手を伸ばした、その時だった。
「あれ……」
思わず目を疑ってしまう。そして、わけもなく脚が震えてきた。
その視線の先にあったもの、それは。
「奈緒、学校に戻って来てたんだ……」
奈緒の下足ロッカーに、本来なら置いてあるはずの上履きがなく、代わりに彼女がいつも履いていたローファーが、寂しそうにポツンと置いてあった。
すぐさま、男子の方のロッカーに視線を動かす。
心臓が早鐘を鳴らし、自然と生唾が込み上げてくる。
それを飲み込む音すら誰かに聞かれてしまうような静けさの中で、友美はハッと息を飲んだ。
無駄にデカくて、薄汚れたキャンパススニーカー。
かかとの辺りに乾いた砂がこびりついているそれは、上履きになるはずもない。
友美の予想は、当たっていた。
「奈緒、やっぱり野々村と一緒にいるんだ……」
そんな小さな呟きは、耳が痛くなるほどの静寂に吸い込まれていった。