第3話 もめ事-1
〜 2番の学園祭 ・ 準備 ・ エスコート 〜
昨日、打ち合わせのあと教室に戻り、生徒会から『完成度のチェック』があることは伝えました。 でも、昨日の時点で『清流噴水』の完成度はといえば……お話にもなってないです。 やっと連結パイプが完成して、試しに5人1組で排泄してみました。 結果は、やっとこさっとこ『液を噴けた』レベルです。 目標の3メートルをクリアするどころか、噴水の体を為せていません。
非常にマズイ事態です。
5人が揃って歯を喰いしばって気張らなきゃいけないんです。 なのに、誰か1人のタイミングがずれるんです。 誰かが他の人を頼ってサボってしまってるのは明白です。 それを私が指摘してあげても『私は頑張ってる』とか『油が重すぎる』とか、言い訳ばっかりで話になりませんでした。
クラスの雰囲気も最悪で、私自身、午前中の水泳の授業は全然集中できませんでした。 このままじゃ失敗は目に見えてます。 かといって具体的にどうすればいいかなんて分かんないし……ああもうっ。 だから実行委員なんてヤだったんです。 私だけだったら何とかなるのに、みんな人の足を引っ張るばかりで、ちっとも協力してくれない。 出来ない子ほど声が大きくて、態度も偉そうで、一々癇に障るんです。
放課後、とうとうやっちゃいました。 いつもズボラな【11番】さんの態度が頭にきて、カッとなってしまったんです。
「ち、ちょっと【11】さん! 油はちゃんと全部呑んでください!」
「はあ? どこ見てんのよ、飲み干してるじゃないのよっ」
「ボトルの底に残ってます! 適当なこと言わないで!」
「残ってるって……これっぽっちのこと言ってるわけ? あのねぇ、油なんだから、少しくらいしょうがないじゃん」
「しょうがなくありません。 その一滴分が原因で、力が伝わらないかも知れないじゃないですか。 もしそうだったら責任とれるんですかっ!?」
「せきにん〜〜?? はあ〜〜?? 責任って、どういう意味よっ」
「そんなのも分かんないんですか? 【11】さんだけが困るならいいけど、クラス全部が失敗するんですよ。 クラスに迷惑をかけてる自覚、持って下さい!」
「め、迷惑って……そんなつもりじゃ……」
「迷惑そのものです! いいですかっ、メイン展示なんですよ!? これに失敗したら、学園レベルで私達が
「ふざけないでよ! 大人しくしてれば調子にのって……だいたいねぇ、アンタ自分は高みの見物決め込んでるくせに、文句だけ一人前なんて最っ低ッ」
「わ、私だって好きで参加してないんじゃないですからね!? しょうがないじゃないですか、他に色々やらなくちゃいけないんだから。 みんなの動静表を作ったり、道具をレンタルしたり、打ち合わせにでたり……当日だってやらされることが山積みなんですけど!」
「だからって一滴も『ひまし油』を飲んでないのは変わらないでしょ!? こっちはくっさい油まみれになってんのに……アンタもね、ちょっとは自分も参加して、あたしたちの苦労を分かった上で偉そうな口を利いてよねッ」
「そっちこそ私のことなんて、全然気遣ってくれてないです!」
「自分がリーダーなんでしょうが! 甘えんな、バカ!」
「ば、ばかって……あのねっ、私は学年成績2番なんですけど!? 私より出来が悪いくせに、どうしてそんなに偉そうに出来るのか教えてくださいっ」
「2番? だから何? 学園の成績なんて、ただの変態っていう証明じゃないの。 変態な上にバカって、超最悪以外の何物でもないでしょ!」
……売り言葉に買い言葉です。 間に【22番】さんが割って入って、
『2人とも言い過ぎよ。 お互い頑張ってるんだから、そこはちゃんと認めないと』
と、場を納めてくれなかったらどうなったか分かりません。 ただ、一応お互い睨みあったまま黙りはしましたが、ああまで言われたら私にも意地があります。 一息嗅いだだけで込みあげる吐気を抑え、唾を塗り込んで腐らせた吐瀉物のような『ひまし油』。 その場で3Lきっちり飲み乾して、【11番】さんに見せつけてあげました。 監督していて文句が出るなら、私も参加すればいいんでしょ、って感じです。 別に、嫌ですけど、私だって出来ないわけじゃないんです。 ほんっとイラつく……でも、もう彼女のことは気にしません。 もしも失敗したら――その確率はかなり高いけど――全部アイツのせいにしてやる、そう心に決めました。 ざまーみろ。