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ロッカーの中の秘密の恋
【教師 官能小説】

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眠る恋の話 2-3

 料理をする夏目の背中を見ながら、放心していた。40近い男が失敗した結婚生活を振り返って若い娘を前にめそめそするなんてことがあって大丈夫なんだろうか。そして、あのベッドでの・・・・・・・・・・・・。忘れたい。
「先生、もうすぐできるから、テーブル上片付けてください。」
はい、としおらしく返事をしてダイニングテーブルのリモコンだの新聞だのを隅のかごにやる。
渡された布巾でテーブルを拭きながら夏目から尊敬されていたことがあったんじゃないかと、必死で、学会のことや論文指導のことを思い出していたが、そのことがあまりにもささやかに思えてくる。
「どうかしましたか。そんなとこにぬっと立ってると邪魔です。」
皿を持った彼女にどかされた。
「いや、どうもしませんよ。」
心なしか、彼女が強くなったような気がする。
 夏目が抜群に料理が旨いことは驚きだった。手際がいいのだ。週末は体にいいものを与えられているせいか、最近顔色がいいですね、と言われることがたまにある。いままで、めんどくさがって食べなかったり、毎日同じものばかり食べていたりだったから、週末の食事はちょっとした楽しみだ。
「今日はニラレバです。」
さっきから炒め物のいい匂いがしていた。
「にゃんこ、後でもう一回チャンスください。」
思わず言った。それも敬語で。
「なんのですか?」
「セックスのです。」
しばらく黙って咳払いをして夏目が言う。
「もう、今日は二回してます。」
「名誉挽回のチャンスを。」
「今日はもうだめです。」
彼女はそういって茶碗にご飯をよそう。テーブルにはもう出来上がった料理が乗って湯気を立てている。
すっかり心がくじけてしまった。今日は日曜日でおそらく彼女は夕飯を片付けたらかえってしまい、僕は次の週末までこの惨めな出来事を引きずって一週間をすごす。来週は台無しだ。
「にゃんこはもうちょっと僕に優しくてもいいと思う。」
「ご飯つくるのやめますよ。」
相変わらず、セックスが終わると冷たいやつだ。
食事は旨い。
メインのほかに、トマトと茗荷のサラダ、春雨スープ、薬味の乗った冷奴も並んでいる。いつもいい具合に収まるメニューなのだ。夏目は育ちがいい。端々が丁寧だ。
「おいしいね。にゃんこのつくるご飯はいつもおいしい。」
「先生、日ごろからもうちょっと体にいいもの食べてください。そんなだから・・・。」
そこまで言ったところで、離れたところから夏目の携帯が鳴った。ごめんなさい、といって立ち上がっていってしまった。
そんなだから・・・・早いんですよ、とか?そういえば、レバーなんていかにも精のつきそうなメニューだ。今日のメニューの目的はそういう思いやりなのか?などと、思っていたら、夏目が戻ってきた。
「妹からでした。何でもないことで。」
「さっき何て言おうとしたの?そんなだから、、、?」
「え?あぁ。茂木さんに顔色の心配されるんですよ。」
「・・・・・そうだね。」
当たり前だ、夏目は僕が想像したようなことを言うわけがない。ただの被害妄想だ。ぼくの来週一週間は一事が万事こんな感じなのだ、きっと。
その後、ぼくはほぼ黙って食事を平らげて、おとなしくしていた。
「あの、先生。」
食後、沈黙を破ったのは夏目からだった。温かいおいしい番茶だけが、テーブルに残っている。
「なぁに。」
「離婚、するんですか。」
音が何もしない数秒があってから僕は息を吸って言った。
「するよ。」
「そうですか。」
「弁護士にも一応電話したし、本人にも連絡は取ってある。とくに揉めることもなさそうだよ。」
真理子が出て行ったとき、僕は彼女と彼女の両親に、少し待ってください、とだけ言った。
少し、は結局3年以上かかった。本当に終わりなのか、本当にお互いが必要ないのかよくわからなかったから、彼女にもそう話した。
彼女の留学が終わるのを待てる、と言ったら、真理子は冷静に言った。


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