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「夏の出来事 5」
【若奥さん 官能小説】

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夜道-2

タクミは自転車で、
来た道をまた戻る。

駅から家の市営住宅までの道は、
コンビニもなく外灯も少ない。

住宅街を自転車で走ったいたが、
ふと自転車を停めて背中のバッグから
スマホを取り出す。

ちづるにラインでこう送った。

【まだ飲んでる?
俺、DVD返しに外出たー。
   迎え、行こうか?】


しばらく画面を眺めていたが
既読がつかない。

電話をかけようか一瞬考えたが、
まだ店で飲んでいるちづるを
思い浮かべ、やめた。

タクミはスマホをバッグにしまい、
再び自転車で走り出した。

この時間、
住宅街を歩いてる人間は
帰宅中のサラリーマンばかりだ。

タクミはぼんやりと
自転車をこぐ。

すると視界に2人の人間が入る。

自転車でその2人にどんどん
近づき、追いこす。

追いこした瞬間
その1人がちづるだと気がつく。

2人の前を2メートルほど進んだが
反射的にブレーキをかけた。

自転車に股がったまま、
タクミは後方の2人を見つめる。


「、 、 、 、、。」



紺色のロングコートに
ボルドー色のハイヒール。
髪をポニーテールにしている
ちづるはタクミに気がつくと、
小さな声で「ぁ。」と言った。

その瞬間ちづるは『まずい』
という顔をしたのを
タクミは見逃さなかった。

ちづるの隣には
1度会ったことのある
がたいの良い茶髪の男がいる。

黒いジャンパーとGパン姿の
吉川だった。

タクミは黙って2人を見つめる。

「、 、、、。」 


ちづるは、思わず声を出す。

「、っ ぁの、 」


タクミは、
無表情で吉川を見て言う。

「、、。 こんばんは。」 


「 ? っ ぁーー
  こんばんは、、、 。」

吉川はタクミを見て、
タクミの事を思い出そうとしていた。

タクミは、
そんな吉川を横目に
今度はちづるに言う。

「送ってもらったの?」 

「、 っ、、 ぅん 。」

「、、、。 そう。」

「、 、 、、。」


ちづるの目が泳いでいる。

辺りは暗いが、
タクミには
ちづるが今どんな気持ちか
どんな表情をしているかが、
手に取るように分かる。

そんな2人の雰囲気に
吉川は気がつくはずもなく
タクミに向かって言う。

「 あ! イトコの?
    前に会った 、 」

「はい。」 

「あーー! はい、はい。
思い出した。
 ちづるが具合悪かった時に、、
  確か駅で会ったんだよな ?」


「、 、、。 はい。」 


「、、。 1人? 」

「 ?  、、はい。」


「こんな時間に ?」

「  、 、 、 、。」


「 ? 」


吉川は悪気なく
夜中に外に居たタクミを
少し心配してそう言った。

3人の間に妙な沈黙が流れている。

ちづるは居たたまれなくなり、
思わず言う。

「吉川さんっ 
私、もうここで
   大丈夫ですから、! 」

「? え?」

「もう、、 ここで 。
 あの、送ってもらうんで 、、。
      彼に  」

「あぁ。 近いの? 家。」

「はい。 同じ棟ですから、、。」

「  ?

ふふっ 
 なんか、
 急に敬語でウケるんだけど。」


「 え? 、 、、。 」

「酔いが覚めた?
 、、まぁ、いいや。
 じゃー うん。
俺はここで。 
    気を付けてな。」 

「、 、、、はい。」 


ちづるは、
自転車に股がっているタクミに
近づく。

一刻も早くこの場を去りたい
気持ちで、そそくさと吉川に
会釈をして歩き出そうとする。

吉川は
ちづるが歩き出そうとしている
後ろ姿を見て
最後に声をかける。

「あ、 ねぇ、ちづる!」

「 っ !?  ? 」

ちづるは恐る恐る
吉川の方を振り向くと、
吉川は屈託のない笑顔でこう言った。

「また、なんでも相談しろよ?」

「 っ! 、 、 、、。」


ちづるは動揺しながら、
吉川には届かないぐらい小さな声で
「ありがとうございます」と呟いた。

タクミは、
少し目を伏せ、一点を見つめ
自分の感情を押し殺していた。


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