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バレーボール部物語
【学園物 官能小説】

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編入生挨拶-2



 先生には毎日レシーブを鍛えていただきました。 練習中にミスをすると、先生に呼ばれて個別に特訓するんですが、元々実力よりも運で入学した私は誰よりも多く特訓していただいたと思います。 先生のレシーブ特訓は、1メートル程離れたところから全力でアタックを受けて、正しく先生の手許(てもと)に返す。 これを5回連続で成功させなくてはいけません。 もちろん捕球しやすい角度に飛んでくるボールなんてないんです。 顔も、お腹も、胸も、とにかく飛んでくるボールを取り損ねるたびに痣(あざ)だらけになります。 連続して顔にボールを受けてしまうと、頭はクラクラするし、足はグラグラするしで、立っていることが出来ません。 そういう時は、先輩が両脇から私を支え、倒れないように立たせてくれます。 そうしておいて、監督の前に押しだすんです。 私は何とかレシーブの構えをつくって、お願いしますと大きな声で挨拶するしかなくて……つまり特訓は終わりません。 グズな私は、基本的に特訓に合格した記憶はないんです。 他の人がミスをして、特訓の順番が変わるまで、ずっと先輩方に支えられていた気がします。 だから、恥ずかしい話なんですけど、特訓中に考えていたのは『ボールを急所に当てないように弾くこと』と『早く誰かミスしてください』の2つでした。 たいていは15分くらいで誰かがミスをしてくれました。

 気合を入れていただいた回数は、とても数えきれません。 監督が『集合』とおっしゃった時は、どこであろうと10秒以内に監督の前に整列しなくてはいけないんですが、ちょっとでも遅れるとたるんだ気持ちをビンタで指導して頂きます。 俯いたり、目を逸らしてはいけません。 ちゃんと顔をあげて、ビンタしやすいように頬をだします。 ビンタは基本的に往復ビンタで、まず手のひらで打たれてから、返す手の甲で反対の頬を叩かれるんです。 気合を入れて頂く側としては、痛みなんて感じる余裕はありません。 ビンタの音が悪かったり、角度が悪くて監督の手が痛んだりしては大変です。 叩きやすいように頬を差し出し、ビンタが終わるとすかさず『ありがとうございました』とお礼をいいます。 お礼が遅かったり、声が小さかったり、とにかく少しでも監督の意に染まないことが有れば次のビンタが飛んできますから、そういう意味でも、一度で終わらせてもらうためには必死にならざるを得ませんでした。 

 ビンタといえば、私のお母さんも応援に来てくれた『壮行会』を思い出します。 新人戦を控えた時期に、学校の体育館で先輩対後輩の練習試合があったんです。 普段は保護者といっても体育館には入れません。 『壮行会』は、数少ない部員のお披露目の日でもありました。 試合は一進一退の接戦でした。 普通なら先輩にコテンパンにのされる私たちですが、試合前でコンビネーションが合ってきた時期でもあり、逆に先輩方が試合から遠ざかっていたのと重なって、それなりの試合になったんです。 結局最後は先輩方に押しきられましたが、セットカウント2−3という、最終セットまでもつれた試合をすることが出来ました。 ところが、これが監督の逆鱗に触れてしまいました。 後輩相手に不甲斐ない試合をした先輩方は、試合の後でネットに沿って一列に並ばせられ、監督から気合(往復ビンタのことです)を入れて貰って、更に顔へ鉄拳指導を受けました。 殴られて後ろに倒れそうになっても、ネットがあるから倒れられません。 たいていは2、3発殴られて終わりでしたが、特にミスが多かった先輩は10発以上指導を受けていたと思います。 終いに鼻血が溢れて、監督の手や床に血が点々と零れました。 監督の剣幕が怖くて、私達はもちろん、先輩方も誰も止めることなんて出来ません。 気が済むまで指導を受けるしかないことは、私たちは十分に分かっています。 そんな折、慌てて1人の保護者が見学席から飛んできました。 多分、鼻血が出た先輩のお母さんです。 もし監督を止めようとすれば、そんなことしたら監督がもっとお怒りになるのは目に見えています。 ハラハラしながら見ていると、お母さんはハンカチを出して、まず監督の手についた血を拭きとりました。 次に地面に這いつくばって、床に飛んだ娘の血を拭きはじめたんです。 私が思っていたのとは真逆でした。 お母さんは監督にたてつくわけじゃなく、まして娘を庇いに来た訳でもなく、無様に血を出してしまった娘の失態を拭(ぬぐ)いに駆けおりてきたんです。 監督に謝罪しながら床を拭く先輩のお母さんの姿をみて、ああ、やっぱり監督は絶対なんだ、と改めて強く感じました。 



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