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桜の降る時
【初恋 恋愛小説】

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めぐる季節のなかで-1

 あたしが蓮と出会ったのは高校3年生の春、桜が満開の季節だった。初恋もまだだったあたしは気が付いたら教師である蓮に、恋をしていた。
 驚くことにあたしと蓮は前世で恋人同士だった。前世の蓮は藤森蓮として、前世のあたし、さくらは水城霞として生まれ変わったということを知った。

 春。桜がまるで雪のように降る季節。俺は霞に出会い、恋に落ちた。さくらの生まれ変わりとは知らずに。教師と生徒として霞に出会った。

 前世の蓮が待ち合わせに来なかった理由を知った梅雨。あたしはどしゃぶりの雨のように泣いた。あたしのせいで前世の蓮は死んだ。ううん、殺された。あたしの、さくらの、父に。そのことを蓮から聞いたあたしは自分を責めた。でも、蓮の言葉を聞いて今度こそ幸せになろう、蓮を幸せにしようと誓った。

 梅雨。霞の涙は梅雨の雨のように止まなかった。前世の俺がさくらの父に殺された事実を知ったから。梅雨の後には必ず、輝く夏が来るように、霞の涙が輝く笑顔に変わるはずだと、自分に言い聞かせた。

 生まれて初めて、彼氏のいる夏休み。あたしと蓮は夏の夜空に咲くような花火を見にいった。そして…。花火の咲く夜空の下で、初めて、蓮とキスをした。

 夏。花火のように一瞬の、思いがけない再会をした。霞の中に残っていたさくらがひょんなことから俺の前に現われた。俺は混乱した。俺が今、愛してるのは霞なのか、それともさくらのままなのか。今まで気付かなかったけど、俺の中にも前世の蓮が残っていたらしい。きっと、さくらを求めていたのは前世の蓮で、霞に恋をしたのは紛れもない、藤森蓮なんだと今は思う。あの日から俺は、もう前世に縛られず、霞を大切にしようと今まで以上に思った。

 なぜだか人を切ない気持ちにさせる秋。あたしは不安でいっぱいになっていた。蓮が好きなのはあたし?それともさくらなの?って。受験勉強のせいか、ナーバスになりすぎていたのかもしれない。どんどん、マイナス思考になっていって、まるであたしは自分で自分の首を絞めているかのようだった。

 秋。夜空にぽっかりと浮かぶ満月を見ながら、霞のことを考えていた。霞と出会った時のこと、今まで霞と過ごしてきて日々のこと。この時の俺は、霞が悩んでいることなんて全く気付かず、1人、幸せな気持ちでいた。

 凍えるように寒い冬。あたしと蓮にも冷たい別れがくるんだと思っていた。でも、菜月に話しを聞いてもらって、あたしのひとりよがりの考えだったことに気付けたおかげで、人生で最高のクリスマスを過ごすことができた。大好きな、大好きな蓮からのプロポーズ。あたしはきっと、この先何があってもこの日のことは一生忘れない。

 冬。1人でいるには心まで寒い季節。霞の態度がおかしいと気付いたけど、怖くて何も言えずにいた。ただ、霞から何か言ってきてくれるのを待つことしかできなかった。
 いろいろと考えた。考えれば考えるほど、霞と離れたくないと感じた。この先もずっと霞と一緒にいたい、霞のそばにいたい、霞を幸せにしたい、と思った俺は、プロポーズをした。
 霞が看護師になる夢を叶えたときも、もし俺を好きでいてくれたら、結婚してほしいんだ、と。


 高校を卒業してから3度目の春。桜が咲くにはまだ少し早い季節。あたしは看護学校を卒業し、国家試験に合格し、4月からは念願の看護師として働くことになった。
 「蓮、遅いなぁ。この桜の木の下で待ち合わせしようって約束したのに…。」
 今日は国家試験の合格発表の日。結果は直接、霞の口から聞きたいと蓮が言ったので蓮にはまだ知らせてない。早く、蓮に合格したこと伝えたいのに…。
 あたしたちは蓮の家の近くにある、公園の大きな桜の下で待ち合わせをしていた。
 もう約束の時間、過ぎてるのに…。蓮は時間に滅多に遅れる人じゃない。何か…、あったのかな。携帯も通じないし。


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