第19話 29番日誌R-3
―― 7月○日 晴れ ――
体育の時間は運動してこそ楽しめる。 変質的な運動だったとしても、身体を思いきり動かせれば、それはそれで気持ちいい。 だから、最近の『運動しない体育』っていうのは、しばらくは体幹トレーニングだとか、スタビライゼーションの応用が続くのがしょうがないにしても、個人的にストレスが溜まる。
『牝性を象徴するポーズで姿勢保持』がテーマだった。 といっても、日々オマンコを広げてみせて、恥ずかしい自分、痴態を示すことに意識を配っているわけで。 【22番】さん達みたく冴えた閃きがあればいいんだけど、これ以上どんなポーズを取ればいいかというと、ちょっと思いつけそうにない。
そんな私達を見越してか、8号教官はポーズの具体例を用意してくれていた。 かつて牝の痴態は、現在と違って映像として需要があり、その頃に撮影された牝映像――いわゆる『AV(アダルトビデオ)』――から教官が抜粋したものだ。 『ふとももの付け根を刻む、ハイレグポーズ』、『腰の括れを強調した、ジュリアナポーズ』『柱にしがみついて腰を前後させる、駅弁ポーズ』――本音をいうと、普段の私達の方が牝っぽい気がした。 『仰向けになって顔と胸を揺らし、お尻を上げた牝豹のポーズ』なんかは、先日練習した『プランク(体幹トレーニングの基本)』とそっくりだし。 まあ、敢えて何もいわないでおいた。
教官がもってきたモニターに映ったポーズを、それぞれ真似てジッとする。
ポイントは2つ。 1つは『表情を顔にださないこと』。 映像内の女性は、時に笑顔だったり、時にこちらを挑発したり、とかく表情が豊かだった。 これは牝性・下品を通りこしたオゲレツな恰好で、節度をもった下品さを表すためには、身体のみ下品に振舞わなくちゃいけない。 下品な笑顔や下品な媚びなんて以ての外で、突き詰めれば牝の表情は全て下品だ。 だから、表情を消すしかないことになる。 私達も、何食わぬ顔でお尻を括れさせながら、思いきり腰をつきだした。 もう1つは『口を半開きにすること』。 無表情といっても、牝性が顔から抜けてはいけない。 自分が淫らな牝であり下品な事実を隠さないために、いつでも卑しい体内の粘膜――この場合は口腔粘膜――を晒すのは最低限のマナーだ。 視線はモニターに、ポカン、と必要以上に開いた唇は中空に向けながら、私達のポージングは5限一杯続いた。
6限は、先日同様、5限+塗り薬、接着剤、利尿剤。 7限もそうで、6限が上手く出来たコは繰り返し。 慣れてきたからもあるし、ポージング自体は簡単だったし、20人以上成功していた。 (当然私は成功組です♪) 失敗しちゃったコは、ウンチゼリーを浣腸してから再トレーニング。
そんなこんなで、身体を動かせないから、長く感じた午後でした。 何でもそうなんだろうけど、慣れってスゴイと思います。 私たち、明らかに8号教官に鞭で指導される回数が減ってるし、それなりに対応できちゃってます。 成長してるっていうか、順応してるっていうか……とにかく、ヒトってスゴイなぁって思う今日この頃です。
―― 7月○日 雨 ――
一日を振り返って、一番キツかったのは断トツで体育です。 体幹トレーニングの総括として、小テストがありました。 テストがあると、不合格者に再テストや特別指導があるから……どんな教科もそうですが、テストとなると緊張感が半端なかったです……。
集合場所がグラウンドじゃなく、体育館でもなくて『F棟(通称スカ棟)大教室』な時点で嫌な予感はあった。 事前に『小テストをする』って聞いていたから、覚悟はしてたつもりだけど、予想外の場所だ。しかも教官に加えて上級生の『体育委員』が5名、直立不動でスタンバっているもんだから、しわぶき1つ聞こえない。 テストは2科目で、両方合格した場合のみ無罪放免。 片方でも不合格になれば、特別指導の後、次の体育で再テスト。 クラス全員合格するまで次のカリキュラムにはいけないんだとか。