第12話 29番日誌K-3
―― 6月○日 晴れ ――
『段違い平行棒』は、全生徒の必修実技だ。 理由は簡単で、旧世紀に『牝専用競技』として出発したから。 体操競技の目的が『運動を通して牝らしさを表現する』ことにある以上、段違い平行棒は特別な意味をもつらしい。 それぞれ最低1つの回転技と、1つの手放し技を完成させなくちゃいけないとのこと。
といっても、私たちは体操の選手でもなんでもない、ただそこそこ運動神経がいいだけの牝だ。 はじめは平行棒同士の狭い隙間で回転(=車輪)する練習だ。 先日の鉄棒と違って手にサポーターをつけているから、面白いようにクルクル回る。 注意することは、上空に向かうタイミングでは足を伸ばして遠心力をつけつつ、回転中地面の近くでは開脚して足先が棒や地面につかないことだ。 床からゴム製の柔らかい棒が伸びているんだけど、脚を開いて回転したとき、先っぽが丁度おまんこに当たる高さに調節してあって、勢いよく当たると『プー』となる。 ちょっとでも脚の拡げ方が足らなかったり、勢いがなかったりすれば鳴ってくれない。 私たちにはそれぞれ30回『プー』と鳴らすことが課せられたから、みんな一生懸命脚を拡げておまんこをぶつけた。
回転技に慣れたらすぐ、手放し技をさせられた。 一番オーソドックスな手放し技ということで教官が実演してくれたのは、高棒で後回りした勢いにのって手を離し、グライダーの要領でバーを越しながら後ろに跳ぶ。 このとき脚をめいいっぱい開かないとバーが越せないから、教官は股間を中心に両足で『Vの字』をつくるまで足を開いていた。 そして、低いバーを飛び越えてから両手で掴むなりすかさず次の回転に繋げる。 名前は『トカチェフ』或は『懸垂前振り開脚背面跳び越し懸垂』というらしい。 回転の途中で手を離すだけでも怖かった。 もしもクラスメイトの補助がなかったら、練習そのものが無理だったと思う。 私たちは1人ずつ、クラスメイトが見守る中で、おっかなびっくり『トカチェフ』を練習した。 天井からゴム製の紐がぶら下がっていて、バーを跨いで後ろにジャンプする時、肛門にその紐が嵌るくらい高く飛べれば上手くいくという。 何も分からない私はその言葉を信じるしかなくて、とにかく肛門で紐を捕まえようとして、お尻が高くなるようなジャンプを繰り返した。
次々にジャンプを繰り返して6時間目が終わる頃には、2番さんを筆頭に5人くらい『トカチェフ』に成功していた。 相変わらず優秀な人はきっちり仕上げてくるからスゴイ。 私なんて、2・3回お尻を紐に当てることが出来たくらいで、ひたすらバーの間に落下するだけ。 床に敷いてあるマットはフワフワで、何度落下しても怪我どころか痛みさえなかった。 あ、でも失敗の度に鞭を貰うんだけど、鞭はいつも通り痛かったかな……そんな感じであっという間の1時間だった。
6時間目が終わった時点で、みんな一目で分かるくらいヘトヘトだった。 体力的にどうこうというより、慣れない段違い平行棒で激しい運動をしたせいで、ずっと緊張しっぱなしだったことで疲れたんだと思う。 だから『これから模範演技を鑑賞する』と聞いたとき、みんなが一気に明るくなる。 私だって神様に感謝したい気持ち。 そういうわけで、7限目は、特別に『Aグループ』の先輩が『段違い平行棒』を練習する様子を見学した。
レオタード姿――ただし普通のレオタードじゃなくて、特に股間なんて紐と見間違うくらい、細くて喰いこみが厳しい衣装だった――の先輩たち。 Aグループ1組だから直接の面識はない。 身体のラインがスラッとしてて、とんでもなくスタイルがいい。 顔も賢そうだし――いや、実際賢いんだろうけど――私からみたら別の人種かって思うくらい整ってみえた。 そんな先輩方が平行棒をクルクル回り、前から後ろから、いろんな角度で拡げたおまんこを見せつけてくる。 喰いこんだ紐からは陰唇がどうしたってはみでるし、レオタードに収まりきらない色素が沈着した肛門が覗いているし、後輩に恥ずかしい部分を見せつけるのは恥ずかしいはずだ。 でも、先輩方の顔には羞恥心の欠片もないように見えた。 だから、見せつけながら自信満々に演技する姿が、よりいっそう清々しくて、カッコよかった。
技自体の凄さもさることながら、お股を全開にしているにも関わらず平然と振舞う姿勢に、なんていうか、格の違いを見せつけられた気がします。 もちろん心の中でどう思っているかなんて分かりませんが、見ている側に悟らせなければ御の字ですよね。 私も、頭の中では『恥ずかしがらずに堂々と』と思ってはいるんですが、身体は強張るし頬は赤らむし……中々イメージ通りにはいきません。 いつか私も先輩方みたいに、誰に見られても堂々とおまんこを拡げられるようになりたいな……って思います。