秀子の味-2
秀子に手紙を渡してから、1週間が過ぎましたが、秀子からの着信は有りません。
マサは、ほぼ諦めていました。
普通の主婦が、そう簡単に落ちるはずが有りません。自分で納得していました。
その日は、いつものように、近くの居酒屋で晩飯食べようと行くと、一番奥の席に、人妻風の3人組がいました。マサは、一番奥のカウンターが指定席です。
カウンターに座り、ビールを注文すると、
<あれっ、お客さん>
なんと、秀子さんが居るでは無いですか、マサは照れながら、
(こんばんわ、こんな所でお会いするとは・・・。)
<お一人ですか?>
(はい、いつも一人で来てますよ、週に3〜4回は)
そんな会話をしていました。秀子さんは、あんな手紙を渡したのに、普通に接してくれました。
マサはホッとして、まだ可能性が有るかもと思いながらビールをグィっと飲みます。
後で秀子さん達の会話が所々聞こえます。
他の二人が、誰?誰?って秀子さんに聞いていました。秀子さんが説明しています。
その中の一人のご婦人が、
【あの〜、良かったらこちらでご一緒しませんか?】
(えっ、良いんですか?一人より美人と飲んだ方が美味しいからね、じゃあ遠慮無く)
マサは後ろのテーブル席に移動しました。
(初めまして、マサと言います。この近くで会社やってます)
マサに声を掛けた女性が、
【私は雅美、こちらが朋美、それから郵便局の秀子、マサさん宜しくね。乾杯しましょう
】
マサはこの時、初めて秀子さんの名前を知りました。
この3人は近所の主婦友達で、リーダーは雅美さん、多分40代中盤、そして朋美さんと秀子さんは、アラフォー位です。
会話が進み、酒も進むと、どうも雅美さんの目が、マサをロックオン。
色っぽい視線を投げかけています。秀子さんはマサの隣だから、表情は解りません。
口も饒舌で、どんどんと会話の中に皆を引き込んで行きます。
雅美さんは、完全にマサの事を、気に入ったようで、プライベートの事から、仕事の話まで色々詮索してきます。
【そうなの、マサさんはバツ有りなんですか、だから色っぽい雰囲気なのね、一人暮らしだと、色々困る事が多いでしょう、ウフフ】
(そうでも無いですよ、家事は適当にこなしていますし、掃除、洗濯は嫌いじゃないから)
【そうなの、意外ね、人は見かけによらないわね。】
<良いな、掃除、洗濯好きな人、家の亭主なんか、ごみの1つも拾わない人だから>
他の2人も、声を揃えて、そう、そう家も同じよ。
マサは、偶然とは言え、良い雰囲気で秀子さんに近づく事が出来ています。
【ねぇ、この後、皆でカラオケ行かない?】
(良いですね、美人奥様3人とカラオケなんて、最高です。行きましょうよ、私が今日の出会いを記念して、奢っちゃいます)
朋美と秀子が顔を合わせて、行こうかと話して居ます。
結局、全員でカラオケBOXに直行しました。やはり年代が違うから歌う歌も違いますが
意外に3人ともノリノリです。
雅美さんは積極的にマサに、スキンシップをして来ます。何曲もデュエットもしました。
腰に手を回したりして、雰囲気的には最高でしたが、マサのターゲットは秀子です。
秀子との願望を叶えてからでも雅美は落とせそうと思ってました。
まるで、見せつける様にマサに接近してくる雅美、ワザとそれに答えるマサ
そんな雰囲気で、カラオケを終えました。
マサの作戦通りなら、以前からマサを知ってる秀子は、面白くないはずだと、雅美はグループのドンのような存在だから、嫌われたくは無い。
でも、マサのプライベートの事とか知った事で、少しは興味を持ち始めた様子です。
マサがあんな手紙を書いたのも関わらず、普通に接してくれた様子でそれを伺えます。
カラオケから3日後くらいにマサは郵便局へ用事に出かけました。
秀子が窓口で忙しそうに仕事しています、完全に仕事モードの顔で、キリッとした表情は確実に女王様を彷彿する雰囲気です。
他の客が帰り、マサが窓口に行くと、
<先日は、御馳走様でした。楽しかったわ、そうそう雅美さんが、又、マサさんを誘ってってうるさいのよ。>
(イヤ、秀子さんとなら行きますが、雅美さんとは・・・。)
秀子に優越感を与えるようなセリフです。これも作戦ですが・・・。
<でも、この前あんなに仲良くしてたじゃない?>
(あれは、場を白けさせない為ですよ、私には秀子さんしか映って居ません)
マサは、きっぱりと言い切りました。その瞬間に秀子さんの顔がポッと赤らみました。
これは脈が有るかも知れません。
<でも、雅美さんが煩いから、もう1度だけお付き合いして上げてよ、勿論4人で>
(余り気乗りしないけど、秀子さんの頼みなら、仕方が無いですね。解りました)
(でも、その代わり、以前の手紙の返事待ってます)
マサは、そう言い残し、郵便局を後にしました。