家族になろう-1
「えっ、風馬君の事どう思うかって?」
「うん…。」
何年ぶりいや何十年ぶりかに母と肩を並べ、キッチンで使い終わった食器を洗う。
「どうって、良い子じゃない?少々頼りない所もあるけど。」
この前お爺ちゃんが「若葉を頼む!」と焼き肉屋さんで態々頭を下げてまで彼にお願いをした。それはつまりお爺ちゃんは彼を受け入れてくれたと言う事。けど私の保護者と言う面ではこの母とで例外ではない。
慎重な所もある私は彼女にも許可を得なければならないと考え。すると母は意外な返答をしてきた。
「…別に、勝手にすれば良いんじゃない?」
「えっ。」
投げやりで無責任に払ってきた。
「勝手にすれば良いって。」
「…若葉、私は貴女の母親何かじゃない、お爺ちゃんが貴女の親だから。」
それは嘗て私が小さい頃、保育士になる夢を抱きつつも全然上手くいかず、家事や子供のしつけに追われ、ついにノイローゼとなり幼い私と父を置いて家を去って行った。恐らくその事を未だ引きずっているらしく。
「そんな事ない!…例え昔私たちを置いたから自分何か母親を名乗る資格何てないと思っていても、それでも私にとってお母さんはお母さんだよ!」
「若葉…。」
瞬き一つせず鋭い眼光で見つめる私と、動揺に満ちた目の母。
この日は休業日で、客は居ず代わりに風馬君が店の手伝いをしたいと野菜の仕分け作業を行っている。
「御免下さーい!」
「…あっはい!」
我に返るように来客者の声に反応し、逃げるように外へ駆け寄って行った。
お母さん、何れか何処にでも居る母と娘として接し合える時は来るのだろうか?