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探偵と悪魔
【ファンタジー その他小説】

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その探偵、閑雅につき-1

青年はとても嬉しそうな表情で喫茶店へと歩を進める。
「あのアドバイスの後、だいぶ順調に成長できてる気がするなぁ。」
大学でも教授に褒められ、更に成長することを期待されて本人も悪い気はしないようだ。
「でも、ここで気を緩めちゃいけないよな。もしできたらまたマスターに聞いてもらって何かを掴めたら...。」
考え事をしながら歩き続けていた青年は、ふと何かにつまづいてしまう。
「てめぇ、何しやがんだ!」
運悪くつまづいたのは、あからさまにガラの悪そうな男の足だったようで、すぐさま胸ぐらを掴まれてしまう。
「ご、ごめんなさい。考え事をしていたら前が見えなくなってて...」
「誰に向かって口聞いてんだよ。こっちに来い!」
そのまま路地裏まで連れ込まれてしまい、薄暗い場所で不良たちに囲まれてしまった。
「こいつ、俺の足踏んでおいてまともに謝りもしねぇ。」
「申し訳ありません。今度は絶対ぶつかりませんから。」
「今度だぁ?今落とし前をつけんだよ!」
その一声を合図に青年はマワされ、何度も何度も殴られ、蹴られ、踏まれてボコボコになるまで徹底的に暴行を受けた。
青アザができるほど殴られた青年を見た不良の一人は、
「こいつ、まだ殴られなんねぇんじゃね?」
傷のために目を細めた青年が『睨んだ』と思ったようで、更に暴行を加えようとした、が。
「もういい加減やめませんか。一人を複数で暴行するのは。やり返しもここまでいけば、立派な傷害罪ですよ。」
路地裏の入り口には神楽が立っていた。
「誰だ、お前?」
「殴られている子の知人ですよ。」
「ちょうど良いや。こいつ反省しないからお前が代わりに謝れよ。」
「それだけ殴ってまだ足りないんですね。」
「あん?これは社会教育だよ。」
「なるほど。ずいぶん『ご立派な』教育を受けてきたようで。」
「お前も相手になってくれんのか。良いぜ、同じサンドバッグにしてやるよ。」
不良の一人が神楽へ襲いかかる。
「とりあえず...」
「え?」
「彼を返してもらいましょうか。」
不良には何が起こったかわからなかったが、一瞬、しかも片腕だけで地面へなぎ倒されてしまった。
「なんだ、コイツ?」
「かまわねぇ、やっちまえ。」
複数人で神楽を倒そうとするが、結果は変わらない。流れるような動きで相手の動きを交わしつつ、的確な一撃で一人ひとりを倒していく。
「なんでだ?」
「コイツ並じゃねぇ!?」
ふと気づけば、不良は全員倒されて神楽は青年の元へと駆け寄る。
「生きてますよね。無事...ではないでしょうけど。」
「...マスターさん?」
視点は定まっていないようだが、意識はしっかりしていることを確認すると、青年を立ち上がらせる。
「自分で立てそうですか。」
「だ、大丈夫です。」
フラフラしつつも、なんとか自立しているようだった。
「まずは病院に行きましょうか。」
神楽達がその場から立ち去ろうとしたとき、
「待てよ。」
神楽が振り向くと、起き上がった不良の一人が、銃口を向けていた。
「一人で走れますか?」
「なんとか。」
「とにかく全力で逃げなさい。早く!」
青年の背を押し、表へ逃がした後に彼女はその不良と対峙する。

「はぁ、はぁ...マスターが危ない。何とか助けなきゃ。」
青年はフラフラした足取りで走りつつ、助けを求められそうな人を探した。
しばらくして、見覚えのある姿を見つけて声をかけた。
「探偵さん!」
「おう、坊主。...ってどうした、その格好?!」
「僕のことはいいんです。マスターが、銃を、持った、男と、路地裏で...」
「だいたい状況はわかった。ただ相手が武器持ちとなると、素人じゃどうにもならん。」
そう言って柿里はケータイを取り出す。
「お前のマスターは強いけど、個人じゃないからな。あいつのツテは凄いぞ?」

「そんな危なっかしいオモチャ、どこで手に入れたんです?」
「どこだっていいだろ。ただじゃ返さねぇぞ。」
(リボルバー式拳銃か。6発回避すれば応援が来るはず。)
神楽としては、あまり『チカラ』に頼らずこの場を乗り切ることを考え、相手の動向を注視した。
「俺たちをコケにしたツケ、返してもらうからな!」
狙いをつけて引き金を引く。
当たらない。
続けざまに銃弾は放たれるが、全く当たらない。
「なんで、避けれるんだよぉぉ?!」
何発となく銃弾は放たれる。全く当たらない。
しかし、神楽は焦りを感じていた。
(もう軽く10発は撃ってる?!あの銃、いや何か居る!)
『同属』がサポートをしているとなればさすがに手段を選んではいられない。そう判断し、素早く相手に近付く。
その間も銃声は止まらない。
「消えろぉぉぉぉぉ!」
最後の一発が、神楽の肩を掠める。
白いワイシャツが赤く染まるが、それでも止まらず、そして、
「あなたは『眠っていて』ください。」
その刹那、神楽の瞳は真っ赤になり、途端に不良が力尽きて倒れた。



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