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探偵と悪魔
【ファンタジー その他小説】

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その探偵は万能につき-1

「ヘヘっ、これでやつも終わりだな。」
「そうだ。小賢しい探偵もこれで消える。」
小高いビルの屋上から正面に見える喫茶店を眺めながら、男二人はしたり顔だった。
「この都市での快進撃もここまでだぜ、柿里さんよぉ。」
「...呼びましたか?」
「は?」
男二人が咄嗟に振り返ると、そこには『ターゲット』とはずである探偵が立っていた。
「馬鹿な!?お前は事務所にいるはずじゃ...」
「ええ。さっきまではいたんですが、マスターに助言されましてね。高みの見物をしようと屋上に上がる二人が見えた、ってね。」
「へっ、予定は変わっちまったがやるとこは変わんねぇ。よう、探偵さんよぅ、素直に殺されてくれねぇか。でないと、マスターとやらが
木っ端微塵になるぜ?」
男一人はそう言って右手のリモコンを掲げる。
「あのイケメンマスターが店内まで運んでるのは見てるんだ。変な真似はするなよ。」
爆弾魔の二人は笑顔を浮かべる。それに対し、探偵は慌てることなく、頭を掻く。
「気づきませんかね?そもそもお二人さんがここにいるのを教えてくれたのはマスターですよ?爆弾が届いて何もしないと思いますか。」
「作った俺が言うのもアレだが、簡単にバラせる代物じゃねぇ。動揺させようったってそうはいかないぜ。」
そう言いながら、内心では腹の見えないこの探偵に対して警戒感を募らせる。
「...試してみますか?」
探偵は一歩犯人たちへ近づく。
「動くな!動いたら押すぞ!」
「どうぞ、ご自由に。」
「この...キチガイがぁぁぁぁぁぁ!」
リモコンは押された。後ろで爆発音が...
「しねぇ...どうなってやがる?」
「お前設計ミスったんじゃないだろうな?」
「んなわけあるか。なぜだ。」
犯人は焦りつつ、ナイフを引き抜く。
「なにが起きてるかはしらねぇが、テメェだけは生かして返さんぞ。」
と探偵に向け走り出そうとした瞬間、
「「手を挙げろ!!」」
屋上には一気に機動部隊が展開し、犯人たちを取り囲む。
「なっ、機動部隊だと?!」
機動部隊の数に敵うはずもなく、爆弾魔はお縄につくこととなったのである。

「マスター!大丈夫か!?」
警部率いる爆弾処理班が喫茶店に駆け込んだ時には、
コーヒーのいい香りが店に立ち込めていた。
「嗚呼、警部さん。ちょうどよかった。今コーヒーを淹れ終わったところなんです。一杯いかがですか?」
いつもの調子でコーヒーを勧めてきた。
「ええと...爆弾が届いたというので駆けつけたんだが?」
「それならそこに。」
マスターの指差す先には、丁寧解体された爆弾らしき物体があった。
「お前さんがやったのか?」
「5年前に戦場で爆弾解体の仕事をしてたことがありましてね。」
「あんた何もんだよ...」
そう言いながら、警部は疲れ果てたように席に腰掛けた。
「皆さんの分もありますよ。少し休んで気を引き締めてから、処理をお願いしますね。」
マスターのマイペースさに驚く者や呆れる者もいたが、ここでコーヒーが飲めることに喜ぶ者が多数いたのは後日分かることだった。


「お疲れ、マスター。なんか俺は腰巾着でしかないなぁ。」
「何をおっしゃっているんですか。逮捕実行部隊で最前線に立っていたじゃないですか。」
「マスターって完璧すぎるよね。」
事件がひと段落した夜、喫茶店2階の探偵事務所でコーヒーを飲みながらの談話を楽しんでいた。
元は柿里が始めた探偵事務所だが、今では難事件解決にマスターの助力は欠かせないものになっていた。
「んでもって、喫茶店もやって、ピアニストもやってなんてどういう時間の使い方をしてるんだか...」
「ピアノを弾いてるのはあくまで趣味ですし、月に1、2回だけですから。」
「趣味でプロ級とか、もはや天才だよな。」
そう言いながら、柿里は紫煙を燻らせる。
「いつまで隠しておくつもりなんだ?」
「何をですか?」
マスターは怪訝な顔で尋ねる。この手の話題はマスターが好まないのも柿里は知っているが、敢えて聞いた。
「君が『女性』だってことだよ。今日の犯人すら、イケメンって言ってたし。」
「世の中が本当の意味で男女平等になったら変装もやめますよ。それに...」
「それに?」
「男性からの目線がどうも苦手で...」
「マスター...あんたって本当にシャイだよな。脱いだらあんなにもグラ...」
「それ以上言ったら、ビンタしますよ?」
赤面しながら、マスターは答えた。


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