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と言うわけで、今こうして彼女と向かい合わせで茶をしている、それが俺の出した答え。
「実はあたしも緊張してるんです。こういう事するの、初めてだったから」
少し驚いて顔を上げれば、少々バツの悪そうなはにかみ顔。
ヤバい、結構可愛いかも?
女の子に免疫のない俺にとって、そんな照れ臭そうな笑顔をされると、僅かに残っていた警戒心も自然と薄れてしまうわけで。
「えと、じゃあ、何でその、俺に……声なんて……」
「そ、そうですよね……。驚いちゃいますよね、女の方から声を掛けるなんて、はしたない真似……」
「い、いえいえ! 俺、すごく嬉しかったんです。ただ、なんで俺なんかに声掛けてくれたんだろうって。ホラ、もっとカッコいい奴なんていくらでもいるのに……」
照れた時に、なんとなく自虐してしまうのはいつもの癖。
だけど、彼女は途端に妙に真面目くさった顔付きになって、
「そんな『俺なんか』なんて言い方、止めて下さい! あたし、あなたを見かけた時、本当に素敵な人だなって思ったから、勇気を出したのに!!」
と、大きな声を出すと、そのまま顔を真っ赤にして俯いてしまった。
一気に俺達を包む、沈黙。
でも、それはそんな居心地の悪いモノには思えなかった。
この娘は、俺をちゃんと見てくれている。
前田のような、身体だけの刹那的な関係を求めるような人間と違うんだ、と。
俺と彼女が頼んだホットコーヒーの湯気と、店内を流れる呑気なラブソングが、黙りこくる俺達を優しく包んでくれるような、そんな気がした。