コンピューターの女-3
3.
その女は、暫く辺りの様子を伺った後、立ち止まって雑誌を下ろした。
草笛光子が眼鏡を掛けたような、なかなかの美人である。 デートを約束するからには、それなりに自信があってのことだろう。歳を別にしても、余りブスではないと思ってはいた。 期待以上の美貌である。
年格好が、それほど不釣合いではないのでほっとした。 相手がどう思うか、とにかく名乗りをあげることにして、足早に近づく。
心臓が、どきどき早鐘を打つ。 こんな事は、絶えてなかったことだ。 これだけでも、のこのこ出てきた甲斐があったと言うものだ。
その女は、僕の近づくのに気がついて、ハっとこちらを見る。
僕は、出来るだけ、優しい、いい顔をする。 ここで振られては元も子も無い。
不安そうな女の顔に、ほっとした表情が浮かび、すぐに目元がほころぶ。
「啓介さん?」
「藤子さんですね」
「ああ、良かった。 どんな人が現れるのかと思って。このまま、又飛行機に乗って帰ってしまおうかと、もう胸がどきどきして、立っているのがやっと」
やや低めの、ハスキー掛かった声。
「僕で、良かったのかなあ。 もっと若い、ぴちぴちした男性を想像していたんじゃないですか」
「まあそんな。やはり思い切って出て来て良かったわ。 虎穴に入らずんば、虎子を得ずですもの」
「僕は、虎の子ですか。 張子の虎で無ければいいけれど」
「私、信じてましたの。 相性の好いのは分かっていました。お歳が全く分からなかったので、もしお若い方だったら、どうしようかと。でもよかった」
「すいません。 じいさんで」
「とんでもございません。 私の方が、すこしお姉さんかも知れませんことよ」
一年も、頻繁にメールのやり取りをした間柄。 会ってしまえば、十年の知己の親しみが湧いてくる。
昨夜から取っておいた、ヒルトンホテルの部屋に案内をする。
ボーイにチップを渡して、出て行くのをみすまして、藤子を抱擁する。
鼻孔をくすぐる、ほのかな香水に混じって、甘酸っぱい女の香り。俄然、亀頭が疼いて、盛り上がる。
「好い香りがする」
「痺れるわ」
勃起するテントの突っ張りを、正面から藤子に押し付けると、藤子は胸で押し返してくる。
体を絡ませて、抱擁を味わう。