契り-1
自力で歩けないほど、精神的にも、肉体的にも疲労して動けない尚代を裸のまま抱き上げて、また寝室に戻ってきた。
「わぁ、臭せぇ。……こりゃだめだ」
尚代を夫のベッドに放り投げると、男は窓と雨戸を開け放った。
外は夜明けに近づいていたが、まだ夜を名残惜しむかのように、月明かりで蒼く照らされていた。ムンとした熱い夜気が室内に入ってくる。
そして、男は、なんと尚代の排尿で湿ったベッドマットを、そこから庭に向かって投げ捨てたのだ。
ゆっくりと音もなく落ちていったベッドマットは、途中でグリーンカーテンのネットに引っかかり、ちょうど陽に干す形になった。
「さあ、これでいい。……明日の日差しですっかり乾くだろう。ただ、匂いは残るけれどな」
再び窓と雨戸を閉め、室内に消臭剤をスプレーした。
男はベッドに上がり、尚代の身体を仰向けにした。依然として両手だけはラッピングされたままだった。
「さぁ、神聖な儀式の始まりだ。奥さん、いいかな?……このチンポをご馳走してやるからな。すいぶんお預けしたから、悶々としてただろう」
「そんなことないわ……」
尚代の足の間に膝を割り入れ、尚代の上体にのしかかり、両手で顔を押さえた。そそり立った肉の硬直が、尚代の柔らかい腹を抉らんばかりにめり込んでいる。
「痛いわ……」
硬く熱い肉棒を、縦に感じて呻いた。
「ねぇ、奥さん。……今日あたりが危険日なんだよな?」
「いやぁっ。……やめて!」
尚代の両手を頭の上に上げて、目の前で囁いた。
「危険日って、……男が欲しくなる日の裏返しってことだから、あれだけ激しいオナニーをしていたんだな。指だけじゃ物足りなくて、バイブをサネにあてたりしてさ……」
「いやぁ……やめてちょうだい。……さっきも言ったけれど、欲しくないの。……赤ちゃんは要らないのよ」
男の考えていることがわかり、青ざめた尚代は拒絶の言葉をやっと口に出していた。
「ほら、奥さんのお腹に俺の大っきなチンポが当たっているのがわかるだろう。……お預け食らっているマンコが待ちかねていて、今の奥さんの股ぐらは、もう、早く来てっ、来てってばかりに、トロトロとした愛液が滲み出してるんじゃねぇか.……いや、愛液をダラダラと滴らせているのかも。……奥さんのこのマンコは、どうしても今日赤ちゃんを作りたいって、言ってんだよな」
「こないで……いやぁ……こないで」
尚代は、身体の外に出ている両手で男を遠ざけようと藻掻きながら必死に叫んだ。しかし、男の身体はビクとも動かない。
「さぁ、奥さん。……あきらめるんだな」
男を避けようと尚代の挙げた両手を男は左手で押さえ込み、右手で尚代の後頭部をつかみ、顔を仰向かせると、さっと唇を重ねた。
「うううぅ……あああ」
唇に唇を被せた。尚代は歯を食いしばって耐えている。
「ううっ」
右手を後頭部にあてたまま、今度は左手で鼻を摘む。唇が開くのは時間の問題だった。
「うぐぐぅぅ……」
男の唇の中で尚代の唇が開いた。すかさず、風船を膨らます要領で、思い切り息を吹き込んだ。男の身体の下で尚代の胸が強制的に膨らんでいくのがわかる。
「ううううっ……」
そして尚代の発する拒絶の叫び声と共に、今度は息を吸い込んだ。男の胸が尚代の声で共鳴する。暖かい尚代の胸の中の空気を吸い込んていく。
男は尚代と一体化した気持ちで充実した。
(俺は今、この女と一緒に呼吸しているんだ……)
尚代の唾液が男の口に移る。ほのかな口臭が鼻を突く。
(やっぱり排卵日だな。……マンコ臭が混じっている)
「ううう」
尚代の肺から空気がどんどん吸い出される。
声が呻きになって残りの空気と一緒に出てきた。
「うっ……うっ……」
尚代の顔が真っ赤になっている。肺の空気が全部吸い出されてしまって、息が出来ない。
次に、男は鼻から空気を一杯吸い、反対に空気を吹き入れた。声もなく尚代はむさぼるように吸い込んでいる。
また空気を吸い出す。そして尚代の胸が空になると空気を入れる。それを繰り返す。
男のペースで尚代の呼吸をコントロールする。
しだいに、尚代の頭が真っ白になっていった。
(なんて柔らかい唇なんだ)
男は開いた唇に舌を差し入れ、お互いの舌を絡めた。そして舌で歯並びの良い歯茎に触れる。男は歯茎をねぶり回した。
歯が舌にあたる。お互いの唾液がドクンと出て口の中に溢れてきた。
「ううっ」
再び息を吸い出すと溜まった唾液と一緒に声も出てくる。男は口に含んだ唾液を流し入れた。顔が真っ赤になった。ときどき喉が上下している。
(俺のを飲んでいる)
一度唇を離す。尚代が大きく息を吸う。すかさず唇を重ねて、再度息を吸い出す。
催眠術にかかったように、尚代は力が抜けていった。意識が半分飛んでいるようだ。
「いやぁぁ……だめぇぇぇ」
息なのか声なのかわからない。
再び唇を重ねる。舌を差し入れ、舌を絡める。尚代の唾液を吸い取る。
「やめ……てぇぇぇ……」
吐息なのか叫びなのか、小さな声で尚代が呻く。
男の屹立は、はち切れんばかりに膨らんで、尚代の腹に食い込んだままだった。凹んだ腹には男の先走りがたまっている。尚代の背中に手を入れ、ギュッと抱きしめると張りのある胸が感じられ、尖った乳首が男の胸に刺さっているのがよくわかった。