素敵な誕生日…な、筈が-3
「…機嫌直してよ。」
「別に怒って何てないわ。」
ぶすぅーとした顔でバスの窓を眺めてしまっている私、これは少々我儘な女だろうか。
「仕方ないよ、あのままだったら僕ら夢中になって1時間いや下手したら深夜まで。」
「深夜って、ちょっといいな。」
何かアダルトな響き、でも言ってる事は正論だ。彼は視線を前へ戻し。
「…今僕、お母さんと二人暮らしなんだ。」
「え、お父さんは?」
「ちょっと仕事で単身赴任に行ってる。」
「まぁ、いつ帰ってくるの?」
「分かんない、もう半年前から家に居ないんだ。」
「そうなんだ。」
小さい頃母親に家を出てかれ、男手一つで育ててくれた父親も事故亡くし、現在の保護者である祖父も2回も突然倒れて手術したりして、もう体はふらふらで、そうかと思えば
突然自分を捨てた母親が戻ってきてたりと…、それに比べて彼は転校があっただけで父親母親の居るごく普通の家庭だと思ってたけど。
「なーんて今関係ないか、ゴメンね誘っておいて。」
「…いいよ、別にお母さんに心配掛けちゃ悪いもんね。」
と、口で言いつつも母親の事ばかり考え口にする彼に若干の嫌悪感が。
「所で若葉ちゃん。」
「何よっ!あゴメン何?」
いかんいかん。
「…来週って何か予定ある?」
「え?特にないけど、どうして?」
「だって来週は確か君の…あっ何でもない!」
「?」
何、また隠し事…?、まぁ彼が浮気とかそんなんじゃないのはこの前の一件で分かったけど…嫌だな。
折角彼と星を観て良い気分に浸ってたのに、心が徐々に灰色に濁ってきた。