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なりすました姦辱
【ファンタジー 官能小説】

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第二章 報復されたシングルマザー-2

 汐里はエレベーターの向こうにある女子トイレへ向かう素振りで、通り過ぎざまに、大変でしたね、と愛想の良い苦笑で彼らと会釈を交わした。ちょうどエレベーターがやってくる。女子トイレの入口まで進み、来た道を振り返ると、彼らは全員乗り込み、かつ廊下にはこっちに注目している人間はいなかった。
 トイレのすぐ隣の扉を開けて非常階段へと出た。
 階段に人気はなく、降りて行く自分のパンプスの靴音だけが大きく響いた。土橋のいるフロアが近づいてくるごとに胸が痛くなってくる。
 恐怖……、それだけだろうか?
 薄暗い階段を降りて行くAラインスカートの中で、どれだけ意識を向けないように努めていても、気を失うほど穿り尽くされた肉の兇器の感覚が甦ってきていた。
(な、なに考えてるんだろ、私……)
 スカートの中に漂ってきた熱い疼きを必死に否定し、鉄扉を開けてフロアに出た。
 汐里のいるフロアとはレイアウトが異なり、廊下の両側にドアが並んでいる。幾つかは「使用中」のプレート表示とともに、ドアの磨りガラスから灯りが漏れていた。商談や会議の機密性を確保するため、全部屋に防音が施されている。誰もいない廊下はシンと静まり返っていた。
 どこに行けばいいか迷っていると、来客へお茶を出すために備えられている給湯室から、突然、土橋が出てきた。その醜い姿を見た瞬間、汐里の下腹で嫌悪感と凄絶な快楽の記憶がない交ぜとなり、疼きがジンと強まる。
「ちょ、……な、なんで来たの?」
 自然と小声になる。防音により会議をしている連中には聞こえなくても、アテにしすぎるのは危険に思えた。
「奴隷に会いに来る理由なんて一つだろ」
 いきなり好虐の色を丸出しにした土橋は、声量を抑えてくれなかった。ここまで静かだと、女の高い声より男の低い声のほうが壁床を伝って、各部屋へ聞こえるのではないか危ぶまれる。
「し、静かにっ……」
「くく……、焦った広瀬さんもソソられるねぇ」
 土橋が一歩距離を詰め、タブレットや財布、携帯を抱えているために両手が使えない汐里のヒップへ手を回し、スカートの上から無遠慮に撫で回してきた。
「……やっ」
 大声を上げそうになって、必死に声を押し殺した。こうしている間にもエレベーターのドアが開き、人がやってくるかもしれない。
「静かにしてないのは、広瀬さんの方じゃない?」
 ヒップの片側の膨らみを鷲掴みにされ、まるで捏ねるように円弧を描かれる。
 ……すると脚の間の疼きがますます強まってきた。
「ま、まって……」
 汐里はヒップを揉まれながら、必死にタブレットを操作すると、空いていた会議室に予約を入れた。
「へ、部屋、取ったからっ……。とにかくここではやめて」
 土橋の手から逃れるように背を向け、予約した会議室の方へ歩んでいく。だが土橋は後ろから追いかけてきて、今度はスカートが捲り、真後ろから下着に包まれたヒップを捉えてきた。
「ひぃっ!」
 使用中の会議室の前を通り過ぎようとしたその時、指がヒップの狭間に僅かに食い込んだ。たったひと撫でだったが、指先が下着越しに媚畝を通っただけで背中がブルッと震える。
(やだ……、何なのよ、これ……)
 自分の体なのに恨めしかった。危うく、ドクリ、という感覚が奥から芽生えそうになった。
 二日経った。だが汐里の体が思い出した疼きは、むしろ一日置かれたことで、より鋭敏な反応を見せるようになっていた。
 何とか早く入りたいから、ヒップを撫でてくる土橋の手に苛まれながらも、むしろそれを餌におびき寄せるようにして目的の会議室へと導いた。
 漸く中に入る。
 しかし土橋は部屋に入るや、あっさりとヒップから手を離し、いくつかあったリクライニングチェアを引き寄せてどっかりと腰を下ろした。肘掛に手を置き、キャスターを使って左右に振る横柄な態度で、立ち尽くしている汐里を見上げる。
 汐里は土橋の言葉を待っていた。ヒップを撫で回してきたくせに、二人きりになったら急に離れた。
 その見上げる視線には、淫虐の炎がまだ灯されているのに……。
「……な、なに、用って……」
 ずっと黙ったまま、汐里を視姦してくる土橋に痺れを切らした。心の内は困惑していても、身に染み込んでいるクセで、つい腕を組んで首を傾いだ、土橋を侮る立ち姿になってしまう。
「二つ、あるんだ」
「ふたつ……?」
 土橋は前に屈んで、チェアの高さを一番低くしてやっと床に届く太い脚の上に肘を置き、両手を汐里に差し出した。
「財布、持ってきたでしょ? 貸して?」
「な、なんでよ……」
「理由訊く権利、広瀬さんにあるんだっけ?」
 ぐっと汐里は詰まって、タブレットで隠していた財布を土橋の手のひらに置いた。
 ブランド物の長財布を受け取った土橋は、すぐに札入れの中を確認する。ちょうど昨日ATMに行ったばかりだった。土橋は数枚入っていた一万円札を抜き取り、
「ちょっと、お金に困っててね。休職中だし大変なんだ。借りるよ?」
 と言って、生身のままスーツのポケットに押し込んだ。


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