第一章 脅迫されたOL-13
保彦は余裕をもって膝を進め、汐里を追うことができた。
追い詰めると、容赦ない力を奮って両脚の間に体を入れる。汐里が脚を閉じようとしても、贅肉が付いた腹がこれを妨げた。
「や、……やめて……」
「どうしたのぉ? オマンコ出さないと、エッチできないでしょ?」
直截な四文字を聞いて血の気の引いた汐里が、ショーツを握られて更に蒼白となる。
会社で年下の指導役に厳しく指導され、大した仕事も与えられずに持て余され、所在なく過ごしていたと思われる無能の中年がセックスの相手。シャワーを浴び、じっと身を横たえているだけで、美貌と自慢のスタイルなのだから大したこともできず早々に果ててくれるだろう。
そんな甘い考えでここまで来たのではないだろうか?
しかし……。脅迫者の中身が変わってしまったのが汐里にとっての最大の不幸だ。
「ううっ……、やめてぇっ!」
下着を手にしておきながら時間をかけていると、保彦の思惑どおりに、汐里が恥辱と恐怖に耐え切れなくなって、喉の奥から悲鳴を搾り出した。
その叫びを待っていた。同時に、ショーツを横に引っ張り、ズラした。
保彦はヘアも恥丘もまとめて外気に触れた脚の間と、そして汐里の顔を交互に見た。
どちらに欲情させられるかと言えば、顔だ。
肩を揺すって何とか後手を動かそうとしているのは、肝心な股間を隠すよりも、卑劣な男の前に女の器官を晒してしまって羞じいる顔を、両手で覆って隠したいからにちがいない。
保彦は満足した気持ちで、薄めの下腹の翳りと、万全に処置をしているが故に畝の両側は無毛となって淫猥な花弁を晒してしまっている秘割を心ゆくまで鑑賞した。顔を近づけて詳細を確認すると、どんな下着にも対応できるよう、Vラインが綺麗に整えられている。
「きれいなオマンコだねぇ……。広瀬さんのことだから、もっとグロマンかと思ってたよ」
保彦自身は特にそう思っていなかったが、「ぼ、僕の彼女に相応しいオマンコだね」
メッセージ履歴の中の土橋はアスカこと汐里を恋人にしたがっていたから、そう付け加えてやった。
紅潮した汐里が更にカッと耳の先まで朱くなる。ただ抱くよりも、ただ挿入して射精するよりも、誰であろう土橋哲郎という男に犯される、そう思い知らせて陵辱したかった。
「だ、だからっ、あんたなんかと付き合うわけないでしょっ! 顔見て物言えっ! 頭おかしいんじゃないっ!」
暴行男に性器を曝されてしまっては、凡その女は、悄然と、諦めの境地に入ってしまうだろう。それでは面白くない。汐里の気性から察するに、そう言ってやれば再び反抗心を取り戻すと踏み、思ってもいないことを言ってやったのだ。
「恋人じゃなきゃ、セフレでもいいって言ったでしょ?」
土橋が本心望んでいたのはセックスフレンドという生易しい関係ではない。「性奴隷」……ずっと女にモテないせいで培われた、馬鹿げた夢想だ。
「あんたなんかに……なにされたって、セフレなんかになるわけないでしょっ。馬鹿っ! 死ねっ!」
そうだ。そうこなくちゃ。
「ふふ……、ま、何にしてもさぁ、……まずはエッチをしないことには始まらないよね」
保彦は鼻息で、滑らかな肌に生いる薄毛をそよいだ。「オマンコ、ナメナメしてあげるね?」
よくもここまで土橋風の表現を思いつくものだな、と自分に苦笑しつつ、魅惑の丘のギリギリまで顔を近づけていく。内ももにもふっているのか、甘いフレグランスが芳しい。
「いやっ……、おねがいだから……」
だから?
本当に四十六年間も生身の女を知らないのだろう、ガッつこうとする土橋の体を宥め、唇を触れずに身を起こした。
(ほんっとに浅ましい女だな)
ここまで来ておいて、「性器を舐めないで」と願えば、「わかったよ」と言ってもらえるとでも思っているのだろうか?
「うふっ……、じゃ、広瀬さん、起き上がろうか」
そう言って両手が使えない汐里の肩を抱き、上体を起こした。
すんでのところで土橋の穢い唇から秘門を守りおおせた汐里の顔に、一抹の安堵が訪れていた。だがそんな汐里の目の前で保彦は、張った腹のせいでバックル穴が横に伸びたベルトを外し、スーツのジッパーに手をかける。
土橋の行動を目で追っている汐里に、側身に届くまでに色濃い染みを作っている下着を見せてやった。まるで失禁したかような我慢汁の染みに、
「うっ……」
あまりの漏らしようをとても信じることができないでいた。