陥落-1
2
陥落
男はベッドを囲むように二か所に三脚を置いて、固定のカメラのスイッチををオンにした。
それから、両手が身体の側面で、両脚は膝下からラッピングされ、動くことのできない尚代に男が近づいてきた。
男は、股間の茂みに顔を近づけた。ツンと女の尿臭と先ほどのオナニーで湧きだして乾いた蜜液の匂いがする。女の蜜液は湧きだした直後は男をくすぐる甘い香りがするが、男の精液と同じで、空気に触れるとしだいに腐臭に変わってくる。半日も放っておくと、乾いて耐えられない匂いとなってくるばかりか、肌に付いたところが白くなり痒くなってくる。
「ふぅん、せっかくの綺麗な毛がずいぶん臭いな。こんなに臭くなるんだったら、邪魔だから、後で刈り取ってやろう」
「えっ……何?……何、バカなこと言ってるの」
「昔の生娘の頃を思い出させてやろうって言ってんだよ」
「困ります。主人に……なんて言えば……」
「男に無理矢理犯されましたっていえば良いじゃないか。そして何度も昇天しましたって付け加えれば……」
「そんなこと……言えない」
「夫婦の間で、秘密は良くないぜ」
「本気で、そんなこと……」
「じゃぁ、水着を着るから剃ったって言えばいいじゃないか」
「水着なんて。……そんなの、言えません。……お願い、剃らないで!」
「確かに尻の穴の回りは自分では無理ってもんだな」
「お願い……」
「わかった。今は剃らない。……良いか、奥さん。剃らないって貸しを作ったからな。……いいな」
「そんな……」
理不尽な話だった。勝手に侵入してきて、勝手に陰毛を剃るとか、貸しをつくったとか。
「まあ、まずは俺の指で一度逝ってもらおうか。……さぁ、三度目の昇天ですか。……期待しろよ」
「やめてください。……今ならだれにも言いません。もう出て行って。……もう帰って下さい」
「俺は、別に誰に言われても気にしないけれどな……でも、奥さんが誰にどんな風に伝えるのか興味あるぜ。……旦那には言いたくないんだったら、誰に言うのかな……」
「もう、帰って!……言わないで……」
男は、ベッドに上がり、尚代に添い寝した。目出し帽から見える範囲で、男の顔に尚代は見覚えはなかった。
突然、男の顔が尚代の顔に被さった。唇を重ねてきたのだった。尚代は唇を噛みしめ、首を左右に振って男の侵入を拒んだ。
「よし、抵抗するんだったら……」
男は立ち上がり、階下に降りていった。そして、軽やかな足音立てて直ぐに戻ってきた。手には、先ほど、尚代が嗜んだヘネシーのボトルがあった。
「奥さんの好みは、さすがに上等だな」
男はボトルに口をつけ、ゴクリと一口飲んだ。
「プハーッ。上手いけど、さすがに強いな」
男は再びボトルに口をつけ、口いっぱいに含んだ。そして、再度尚代の唇に重ねていった。静かに少しずつ、唇の隙間から注ぎ込もうとするが、しっかり閉じて顔を左右に背けるので、頬をつたうだけだった。