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離婚夫婦
【熟女/人妻 官能小説】

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義母-1

 豊川には二つ気に掛かることがあった。
 一つは真樹子の件。もう一つは、義父紀夫の件だ。
 真樹子の件に関しては、少なからずモヤモヤが残るにしても、現実的にどうなるものでもななく時間が解決してくれるのを待つしかない。
 一方、義父紀夫の件は、少し心配度合いが大きくなりつつあった。
 紀夫には望未と離婚した後も大いにかわいがってもらっていた。時々メールが入ってきていたし、定期的に飲みにも連れて行ってもらっていた。
 しかし、ここ数カ月音信不通が続いおり、その存在確認さえもままならない状態になっていた。
 何度かメールしたし、直接電話を掛けてもみたが、何の反応もない。豊川と義父が望未と離婚後も良好な関係を続けていることは、義母も承知しているとのことを聞いていたので、もし何か不測の事態が起きているのならば、義母から何かしらの連絡が入ってもおかしくない。
 音沙汰がないのは元気な証拠とはいうものの、やはり気にせずにはいられなかった。
 残念ながら義母との連絡手段は無いし、今更望未に連絡するわけにもいかない。そもそも望未には紀夫とコンタクトを取り続けていることはナイショの話だ。
結局は豊川から確認することが出来ず、歯痒い日々を送っていた。

 そんなある日、久しぶりに紀夫からの着信があった。
「もしもし、ご無沙汰しています。連絡してもつながらないんで、心配していたんですよ」
 豊川は、興奮した口調で電話口に出た。
「あ、晃彦さん。百合子です。お久しぶり、元気?」
 久しぶりに聞いた義母の声だった。
「あ、すいませんお母さんでしたか。ご無沙汰しています。その節は大変ご迷惑をお掛けいたしました」
 百合子と直接話をするのは6年ぶりに近かった。
「ほんと久しぶりに晃彦さんの声を聞いたわ」
 百合子も同様の思いがあったようだ。
「急にごめんなさいね。実はお父さんのことなんだけど・・・・・・こんなこと晃彦さんに相談するのは筋違いなのはわかっているんだけどね」
 そう言って、百合子の話が始まった。

「そうですか・・・・・・わかりました。僕でよければ、協力させていただきます」
「そぉ!?・・・・・・望未のことでご迷惑お掛けして本来だったらこんなこと頼める義理じゃあないのに、申し訳ないわねぇ。でもお父さんから晃彦さんのことはよく聞いるし、他に頼る人もいないんで困ってたの」
「いえ、僕の方こそあれからもお義父さんには世話になりっぱなしなんで、遠慮せずにおっしゃってください。出来る限り力になりますから」
「ありがとう。そう言ってもらえると助かるわ。お父さんも頑固なところがあるから誰彼っていう訳にもいかないでしょ。晃彦さんだったら、何とかなるんじゃないかと思って。勝手なお願いで悪いんだけど、お願いしますね」

「ふぅ〜っ」 
百合子との会話が終わり、携帯通話を切ると、自然に深い溜息がこぼれた。
「癌か・・・・・・」
 義父は癌で入院中だと言う。どうりで連絡が取れなかったはずだ。手術は4ヶ月前に行われていた。胃を全て摘出する大きな手術だったそうだが、いわゆるステージと言われるものはUで、比較的早期の発見であった。ただ、発見部位が胃の上部だったため、全摘出をせざる得なかった。
 この時点で転移はみられていないため、近々に命が奪われる可能性は低いと言われているみたいだった。ただ、今後転移する可能性もあり、場合によってはそんなに時間が経たないうちに発症することもあるとは言われているとのこと。
 現在は抗がん剤治療やその後の検査などでの入院で、近々退院の予定ではあるのだそうだ。
 しかし、転移や再発を回避するためには、同様の治療を継続的に実施しなければならず、今後も定期的な通院、入院加療が必要になるようだ。
 これまで病気とは無縁の健康的な生活を送っていた紀夫。元警察官で体力にも自信を持っていた。
「警官は体力勝負。ずっとそういう生活をしてきたからな。今でも現役には負けないようにトレーニングしてるんだ」
 紀夫は退官してからも、常日頃から体力向上を口にしていた。
 恐らく体力には自信があったのだろう。酒は飲むがほどほどにしていると言っていたし、煙草は20年前に止めたとも言っていた。内臓的な疾患にも気を遣っていたことからしても、病気には縁遠いはずだと信じていたに違いない。
 それが、よりによって癌を患うとは、まさに青天の霹靂だったのだろう。癌になってしまったことで、かなりの落ち込みを見せているらしい。
「そんなこと言ったって癌にはかわらん」
 すぐにどうなるものではないと諭しても、こと病気に関しては、古い概念がそのままになっているようで、今でも癌は不治の病であると思い込んでいる節がある。
 そんなことから、気分的に沈んでいる日々が続いている。
 そこを何とか改善して欲しいのだと義母は言う。
「病は気からって言うでしょ。笑って病を治すなんて人もいるぐらいだし。それよりも何よりも、あんな辛気臭い顔してるのはお父さんらしくないじゃない?これから長い期間治療に専念しなきゃならないのに、弱気じゃ治るものも治らないわ」
 百合子は、紀夫の自信回復の急先鋒を、豊川に託したのだ。
 義父には散々世話になってきた。特に望未と離婚してからも結婚当時と変わらぬ、いや、むしろそれ以上に良くしてくれた。その義父がほとんど見せたことの無い、言わば窮地的な状況に陥っているのを指を咥えて見ている訳にはいかないと豊川は思った。
 これまでの恩義に対して、自分が出来ることは最大限協力したいと思った。
「お義母さん。何でも言ってください。なあに、今は一時的に落ち込んでいるだけですよ」
「だと言いんだけど・・・・・・」
 まだまだ不安が拭えない百合子の様子を感じ、次週直接紀夫に会いに行く段取りを組んだ。
「悪いわねぇ」
「いえ、今まで世話になった分を返すチャンスが来たと思ってます」


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