葵の父親-17
「奈々子はどう?最近。年下の彼氏とさ。」
「まぁ・・・うまくいってるかな。」
「初めて聞いた時は若すぎてびっくりしたし、
なんか訳ありな子っぽいって聞いた時も、あんまり賛成したくなかったんだけどねぇ。
実際会ったら奈々子が惚れるのもわかったわ。
で、葵君だったよね?進学するの?」
「うん、医大受けるって。県内だから引っ越しはしないって。」
「医大かぁー!ストレートにいって卒業までに6年でしょ?
その後2年研修医でしょ・・・約8年も待つの?結婚まで。」
「どうだろう・・・私はもう結婚にこだわってないよ。彼と一緒にいられれば。
子どもは欲しかったけど、諦めようかなって。
それに今の時代40歳過ぎても可能性はあるだろうし。」
「そうなの・・・?去年の奈々子からは考えられない発言!
結婚したいって騒いでたじゃん!男一人でこんなに変わるもんなんだね〜。
それが良いのか悪いのかとか、合ってる間違ってるとか言えないけどさ。」
「ね、私もびっくり。」
お互いの近況報告を済ませて、亜美の体調を気遣って早めに帰ることにした。
別れ際、亜美が思い出したように奈々子に言った。
「あ!待って!あのさぁ、脅すわけじゃないけど・・・」
「何?怖い顔して。」
「内科の婦長には気を付けた方がいいらしいよ。」
「え?」
「私も詳しく聞いたわけじゃないけど、前に内科で働いてた人に聞いたんだ。
婦長を敵に回すなって。」
「敵って・・逆らうってこと?どういう意味なんだろう・・・?」
「あの婦長に目をつけられた人と、なんか一悶着あったみたいだよ。
前に。裏の顔があるのかも。」
「そうなんだ・・・なんか恐いね。あの婦長いつもニコニコしていい人そうと
思ってたんだけど。」
「あと東海林君にもこのことは言わない方がいいかも。
あの人、その婦長に気に入られてるみたいだから。」
「わかった。気を付ける。ありがとう、心配してくれて!」