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水晶玉の告白
【SM 官能小説】

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水晶玉の告白-13


………


エピローグ


 友人の城野圭子さんが消息を絶ってからすでに五年がたつ。当時、私は警察に捜索願を出し
たが、警察は事件と事故の両面からしばらく捜索を続けていたものの、いまだに彼女の行方は
わからないままだった。当時の別荘の使用人は、別荘の持ち主である「安河内ジュンイチ」と
いう男の使いで、城野圭子という名前の女性を別荘に導いたが、その後、別荘でふたりの姿を
見ることはなかったという。 

ただ、五年前に私があの別荘を訪れたとき、部屋にはひとつの水晶玉だけがテーブルの上に
残されたままだった。あのとき見た水晶玉の中に、私がふたりの姿を見たのは錯覚ではないと
今でも思っているが、水晶玉は、窓から差し込んでくる夏の過酷な太陽の光によって焦がされ、
徐々に風化し、まどろむような光を発して溶けていった。


十日前、日本人の男女が北アフリカの砂漠地帯で遺体で発見されたことを週刊誌の小さな記事
で読んだ。ふたりはある武装集団に拉致され、残忍とも言える容赦ない拷問を受け、砂漠に
打ちこまれた磔木に、背中合わせに全裸で縛られたまま放置されたらしい。群がるハゲタカに
体中を啄まれ、局部を喰い千切られ、えぐられた無残な遺体は、砂漠地帯の過酷な太陽の光と
熱風に晒され、からからに渇き切っていたという。週刊誌は男の名前を「ヤスコウチ」と伝え
ていたが、女の名前は記されていなかった…。


彼女が失踪する一か月前に、私に送ってきた手紙に書かれた彼女の言葉が、まるで彼女のすべ
ての告白のように甦ってくる…。


…わたしの告白はたどりつくあてのないものです。告白によって、わたしに刻まれた不条理な愛
の刻印は、水晶玉の中に溢れた真夏の太陽の眩しい光の中で瑞々しく息づいています。
そして、彼がわたしとともに存在する限り、わたしの告白は、永遠の証しとして、至福の癒しと
して、豊饒の時間として、かけがえのない愛として水晶玉の中に生き続けることになるのです…。


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