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水晶玉の告白
【SM 官能小説】

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水晶玉の告白-12


………

差出人: 安河内ジュンイチ
件名 : 水晶玉の告白
日付 : 20×年8月×日 午前 8時00分
宛先 : 城野 圭子

きみとの約束どおり、ぼくは昨日、ニューヨークからこの岬の別荘にまた戻り、ぼくを待って
いるきみにメールを書いている。夏の強い光は、きみとここで過ごした一年前のあの時間を
ぼくに思い起こさせる。窓からは無数の飢えた海燕が白い波のあいだに不気味な旋回を続けて
いる。まるできみを欲しがっている水晶玉の中に戯れる光の帯のように。

あれから一年…早いものだ。ぼくはきみを愛し、きみはぼくを愛し、ぼくたちは抱き合った。
ぼくたちはとても深く抱き合うことができたとぼくは思っているが、ぼくたちのセックスにど
れほどの意味もないことはお互いにわかっていた。開いたきみの脚のあいだは、性愛に対して
未知の意味を求めていた。きみはぼくを、未知の意味の自問を強いる対象とした。だからこそ、
きみはぼくの水晶玉に囚われた。

きみは水晶玉に囚われた後のきみ自身を憶えているだろうか。ぼくたちの性愛に意味のない
価値を求め合う欲望はすでに絶えている。そしてきみは、性愛がもたらす退屈と孤独、失意に
うんざりしている。

愛し合う男と女がほんとうに必要とするものは苦痛以外に存在しない、苦痛こそ愛の悦びだと
ということをぼくらは暗黙の裡に知り得ている。そしてぼくはきみを愛するために鞭を手にし
た。きみもそれを望んだ。愛し合うもの同士に鞭は必要なものだ。ぼくはきみの苦痛を愛し、
きみはぼくが与える苦痛を愛した。きみの白い肌に撥ねる鞭の音と刻まれる赤い条痕こそが
ぼくたちの永遠の証しとも言える。ぼくたちは苦痛という欲望を獰猛に貪る美しい獣なのだ。
それはとても素敵なことなのだ。


水晶玉の告白は実にきみの不条理な告白そのものであり、きみの心と肉体の狂気そのものだっ
た。きみの倒錯した性愛の果ては狂気だった。水晶玉の中にあふれた光は、ぼくが振り下ろす
鞭となって、きみの尖った薄紅色の乳首を刺し、白くたおやかに息づく乳房を撥ね上げ、なだ
らかな下腹の白肌を波打たせ、尻の割れ目を刻み、ぬかるみ始めた麗しい草むらを削いだ。そ
のとき、きみは初めて自らの性愛の悦びを知った。凡庸で退屈な性愛はかき消され、水晶玉が
強いる告白によって香ばしい薔薇色の性愛をきみの中に生んだのだ。


きみは水晶玉の中でぼくの愛おしい標本となる。ぼくに眺められ、ぼくの息を吹きかけられ、
ぼくの言葉を聞き、ぼくに与えられる痛みを欲しがっている。ぼくはきみの心と肉体の隅々ま
で知り尽くしている。きみのからだに潜む、あらゆる突起と窪みの指ざわりと舌ざわり、虐げ
られる肌の陰影の艶やかさ、そして、きみの嗚咽が孕んだ無秩序で狂気に充ちた心…。

きみは自分を欺く不埒な仮面を脱ぐことだ。きみがどんな女であるのか、すべてをここで告白
するのだ。告白を受け入れた水晶玉の中にあふれる光は、きみの象牙色の肌を貪り、悩ましく
覗かせた窪みを犯し、血流を麻痺させる。

今にもきみの狂気と悦びに充ちた喘ぎ声と肉奥の軋む音が聞こえてきそうだ。それこそが水晶
玉に囚われたきみのほんとうの告白であり、ぼくの中にある霊妙な官能を喚起させるものだ。
ぼくときみはお互いに相手を否定しながら深くつながり合っている…いや、つながり合おうと
している。未知の性愛と欲望、そしてかけがえのない苦痛によって。


ぼくの使用人のヨットが、きみが泊まっているホテルの近くの入り江に、すでにきみを迎えに
来ている。そのヨットに乗ってここに来るのだ。別荘の窓の外には、夏の太陽の光が燦々と降
り注ぎ、すべての風景を無機質な色に染め上げている。まるでぼくたちのこれからの美しい関
係を祝福するように。きみとの再会を楽しみにしている…。 安河内ジュンイチ


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