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ケイの災難
【コメディ 恋愛小説】

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ケイの災難-1

撮影の終わったスタジオの控え室。
控え室の鏡の前に座り憮然とした表情の少女がいた。
彼女は今やファッションモデルとして有名な『ケイ』といい、そして本当の名前は相沢圭介である。
そんな彼女(彼)が憮然とした表情で苛立っているのには原因が当然あったのだった。
「全く、またあいつがスタジオの入り口にいるのか…」
ため息混じりにポツリと愚痴ると、ケイの後ろから一人の少女が声をかけた。
「ケイ、また藤堂が来てるんだって?アイツ本当にしつこいわね!」
声の主は朱鷺塚香織といい、圭介のクラスメイトでありモデル仲間であり彼女でもある。
香織は酷く憤慨した口調で腕を組み、不機嫌そうな表情を見せた。
「ホント、勘弁して欲しいよ。アイツってば人の顔を見るたびに付き合ってくれって言ってきて、何度断っても懲りないんだよなぁ」
ケイがやれやれって感じで再びため息を吐くと、香織は苦笑をしつつケイの隣の椅子に腰を掛けた。
「ほとんどストーカーと一緒だね。そろそろ強硬手段に出ないとケイの貞操も危ないかもよ」
「冗談でもやめてくれよ!俺は男と付き合う趣味なんて持ち合わせてないんだからさっ!」
ケイは香織の洒落にならない冗談に鳥肌を立てつつ反論すると香織と向かい合った。
「まあ、私も圭介の彼女として、ケイが藤堂と付き合う事になられたら非常に困るのよねぇ」
あはは…と少し引きつった笑顔で笑いながら香織はため息を吐いたのだった。

今回、圭介と香織を悩ませてる藤堂という人物だが、彼の名前は藤堂聖夜といい圭介達と同じ学園に同じ学年で通う少年である。
学園内での藤堂聖夜という人物は眉目秀麗で金持ちのお坊ちゃまであることから有名であり、性格も明るく人当たりも良いことから女子生徒からの人気も絶大であった。
因みに香織に言わせると「いつもヘラヘラしててムカつく」というのが藤堂に対する評価である。
まあ、基本的に香織は藤堂のことを嫌ってるのだが、個人的な感情以外にも朱鷺塚家と藤堂家はあまり折り合いがよろしくないらしく、その辺も香織の藤堂嫌いの一端を担ってると思われる。
朱鷺塚家は由緒あるお金持ちなのに対し、藤堂家は朱鷺塚家よりも家柄が多少落ちるものの資産に関しては藤堂家が朱鷺塚家を上回っているので、両家とも表面上は穏やかだが心中は穏やかではないのであった。
簡単に言えば、『家柄の朱鷺塚』『資産の藤堂』と言ったところである。

そして、その藤堂の御曹司がケイの存在を知ったのは学園祭でのイベントであった。
学園祭のイベントに強制参加させられたケイをたまたま見た藤堂はケイに一目惚れをしてしまったのである。
それからというもの、藤堂のケイに対する猛烈なアタックが始まったのだった。
当時、圭介と香織は藤堂に対しケイの正体が藤堂家の調査でバレるのではと危惧していたが、藤堂は自分の恋愛については自力で成就するというポリシーを持っていたので藤堂家の調査機関の介入もなくケイの正体はバレずに今日に至っているのである。それ故に今も藤堂は男であるケイに入れ込んでいるのだ。

「しっかし、どうしたものかなぁこの状況…これじゃあ家に帰れないよ」
眉間に雛を寄せ困った顔をするケイを見かねた香織は自分の鞄から携帯を取り出しどこかに電話をかけたのだった。
「斉藤さん…そう、いつものスタジオで……裏の入り口のところに車を寄せておいて待ってって貰える」
どうやら電話の相手は朱鷺塚家のお抱え運転手の斉藤さんのようだ。斉藤さんは俺もケイとして何回か会っていて人柄なども分かってるので接しやすい人なので安心して頼れる人物なのだ。
「じゃあ、ケイ。もう少ししたら車が来るから裏から帰りましょ」
香織はそう言いながら微笑むと俺に抱きついてきた。


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